自社ブランド「TADASHI」の上履きを手にする樫原工業の樫原拓史社長=香川県さぬき市、2024年7月

 縫製が盛んな香川県さぬき市で、3代続く縫製工場「樫原工業」が上履きのサブスクリプション(定額利用)サービスを始めた。学童期は足の成長が早く、消耗品のイメージも強い上履きだが、社長の樫原拓史(かしはら・ひろし)さん(39)は「子どもたちが1日のうちで一番長く履く靴。安心して履けるものを選んでほしい」と話す。(共同通信=西本晴香)

 さぬき市を含む県東部は明治時代から手袋をはじめとする縫製産業で知られ、日本手袋工業組合によると手袋の国内シェアは9割を誇る。樫原工業も1962年の創業以来、手袋やかばん、革靴などを生産。1970年代以降は大手メーカーの上履きの生地部分の縫製を担った。

 ピーク時には1日5千足を製造していたが、少子化や安価な海外製品の台頭により2019年には生産数が半減。下請けからの脱却を目指して2021年、縫製技術を生かした自社ブランド「TADASHI」を立ち上げた。

 TADASHIの上履きは、負荷のかかるベルトやかかとは二重に縫製して丈夫にした他、土踏まずにクッション、靴底にはシャンクと呼ばれる金属の板を入れたことで踏み返しが効き、履き心地がよいのが特徴。使用するゴムの量を減らし、重さは一般的な上履きの約3分の2にとどめた。

 つま先部分には一般的なゴムではなく、合皮を使用。優しい色合いの7色を選んだ。

 樫原さんは近年子どもの足が細長くなっていることに気付き、それに合わせたオリジナルの足型を採用。購入者からは「軽くて歩きやすい」「梅雨時の廊下でも滑りにくい」と好評だという。

 サブスクサービスは、希望のサイズと色を選ぶと新品の上履きが届き、使用したものは返送不要。6年間で最大18足が届くコース(8万8千円)のほか、3年で9足、1年で3足のコースもあり、家族やきょうだいでシェアすることもできる。

 樫原さんは「すぐ大きくなるから、すぐ汚すから、と合わないものを履かせてほしくない。子どもの成長を見守る製品作りを続けていきたい」と話した。

樫原工業の自社ブランド「TADASHI」の上履き(同社提供)

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