石川県珠洲(すず)市が供給する水道水の量が、能登半島地震で住民が転居するなどして供給世帯が減ったのに、地震前の約1.5倍に上っている。倒壊家屋の下にある水道の元栓を閉められなかったり、つながっていた水道管が再び外れたりし、漏水しているのが原因とみられる。市は近く、漏水調査をして解決を図る。(井上靖史)

水道水の供給量が地震前の約1・5倍になっている宝立浄水場=石川県珠洲市宝立町柏原で

◆浄水場の水位が通常の4分の1まで低下

 「漏水が多発し、水道水が不足しています。節水にご協力をお願いします」。7月中旬、市は防災行政無線で市民らに呼びかけた。市内の9割の世帯に水を供給する宝立(ほうりゅう)浄水場の水位が通常の4分の1まで低下したという。  水道を担当する市環境建設課の担当者は「市民が少しずつ避難先から戻り、水道を使う家庭が増えたが、宅内で漏水しているため使用量が増えた可能性がある」と推察する。水を使う時以外は元栓を閉めたり、修理を依頼したりするよう求めている。  宅内で漏水が続く家庭もある。蛸島地区の団体職員川嶋和博さん(57)は自宅の水道がまだ使えず、避難所に身を寄せている。市が整備する水道管に水が通ったのは8月19日。だが、水を使っていないのにメーターが回り、宅内漏水が判明した。修理の依頼はこれからで「生活を再開できるのはいつになるか」と表情を曇らせる。

自宅内で漏水している川嶋和博さん。避難所に身を寄せている=石川県珠洲市蛸島町で

◆「供給コストは単純に1.5倍」

 同課によると、地震前の水道の供給世帯は4791戸。3月末時点では転居などで4585戸に減った。それでも宝立浄水場からの供給量は地震前の1日平均約4500トンでは足りず、8月時点で6000~7000トンに上る。担当者は「単純に言えば、供給コストは1.5倍かかる」と話す。市民への呼びかけで枯渇を回避したが、漏水は続く。  市は、地震後に急ごしらえでつないだり補修したりしたパイプが外れるなどしたのが、漏水の原因とみる。担当者は「市内は全体的に砂地が多く、漏れた水がしみ込み、発見が難しい」といい、解消は簡単ではない。近く始める漏水調査では、音波を使って地道に調査を進める予定。  倒壊家屋が多い地域では宅内の配管が破断したままの状態が多いことも要因。市の担当者は「公費解体して元栓を閉めるか、地中の本管から家庭へつなぐパイプをふさぐしかない」と語った。

◆輪島市も「やはり漏れている」

 同じ課題は地震で甚大な被害を受けた同県輪島市も抱える。市上下水道局の担当者は「震災前にいた人が戻ってきていないのに、震災前と同じ量の水を作っている。やはり漏れている」と話す。漏水箇所を調べ、冬前には修理したい考え。  担当者によると、地震前の供給戸数は1万1434戸で、地震後の契約戸数は8割にとどまる。それでも、全体の7割の世帯に水を供給する輪島浄水場では地震前と同量の1日平均約6000トンの水を作っている。  「家屋が倒壊して漏水したままのところは結構ある」と担当者。水道管が地震直後の調査時点ではつながっていても、その後の復旧工事の振動などで緩んで外れてしまうケースもあるという。 

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