詳しく知りたい〈3〉
原発の使用済み核燃料はプールで冷やした後、どのように保管されるのでしょうか? 茨城県東海村にある施設では、高さ約6メートルの円柱状の金属容器に入れられて、一時保管されています。一問一答形式で詳しく紹介します。
【連載】核燃料のゆくえ
原発で使い終わった核燃料をどうするのか。中国電力と関西電力による中間貯蔵施設計画の動きや、使用済み核燃料の現状を連載で報告します。
Q 原発の使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の内部について教えて。
A 乾式貯蔵という方法で使用済み核燃料を保管する。水の入ったプールで冷やす湿式(しっしき)貯蔵とは違って、水や電気などの冷却設備が不要で、外気を取り込んで自然の対流に任せる。
Q 使用済み核燃料は、キャスクという金属製容器に入れておくんだよね。放射線は出ないの?
A 電力各社でつくる電気事業連合会によると、キャスクから外に漏れ出る放射線量は、使用済み核燃料本体の100万分の1程度に抑えられるという。中国電力によると、2006年に使用済み核燃料をキャスクに入れた際、キャスク表面の放射線量は毎時0.002ミリシーベルトだった。胸部X線の放射線量は1回あたり0.05ミリシーベルトというよ。キャスクの表面温度は37度で、その時の室内温度31度より高かった。
Q 実際に見たことは?
A 中国電力が2024年1月に開いたマスコミ向け見学会で、使用済み核燃料が入ったキャスクを記者が間近で見た。日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)の敷地にある乾式貯蔵施設の見学会で、立ち会った日本原電関係者の線量計の値は毎時「0.00」ミリシーベルト。キャスクの表面を触ると、ぬるま湯のような温かさだった。ふだんはセンサーで表面温度を監視していて、屋内にスタッフは置いていないそうだ。
Q その施設の規模は?
A 幅26メートル、奥行き54メートル、高さ21メートルの鉄筋コンクリート建てで、原子炉建屋から約100メートルの場所にある。この施設内には直径2.4メートル、高さ5.7メートルの円柱状のキャスクが15基並んでいた。キャスクの中の使用済み核燃料のウラン重量は約160トン。プールで7年冷やしてからキャスクに移していて、最も古いのは01年からあるというよ。
Q キャスクは、まだまだ入るの?
A この施設では、最大24基を収容できる。原発は通常、約13カ月間運転して2~3カ月の定期検査に入る。東海第二原発を10年間運転し続けた場合に出る使用済み核燃料を保管できる容量だというよ。
Q 使用済み核燃料を入れたキャスクを置く中間貯蔵施設には、どんな決まりがあるの。
A キャスクもそうだが、建物にも安全性が求められている。原子力規制庁によると、原子炉等規制法に基づく規則で、地震などが起きても建物そのものがキャスクに影響を与えてはいけない、といった条件がある。立地に適しているか、必要に応じて過去12万~13万年、場合によっては40万年前までさかのぼって、どんな地震が発生したのか地層を調べる必要がある。今後、想定される津波などにも十分耐えられる設計にしなければならない。可能な限り不燃性の高い素材を使うよう定められてもいる。
Q 運用面の決まりは?
A 同法の規則で、事業者には約1年に1回、機器類の点検など安全を確認する検査や、原子力規制委員会への報告が義務づけられている。(興野優平、松田史朗)
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