老朽化が目立つ現在のアーケード名店街=静岡県沼津市で

 静岡県沼津市中心部の商店街「アーケード名店街」の建物の一部が今秋ごろ、解体されることになった。完成した1954年当時は先進的だった「防火建築帯」だが、建物の老朽化やにぎわいの喪失で再開発が進むことになった。地権者らは寂しさを覚えつつ「再び人が集まれる場所に」と未来を見つめる。(今坂直暉)

◆完成当時には先進的な建物だった

 防火建築帯は、火災の延焼を防ぐために1952年に制定された耐火建築促進法に基づき、全国で建設された鉄筋コンクリートの共同住宅。JR沼津駅の南に伸びる商店街「アーケード名店街」の建物は、東京都渋谷区戦災復興計画案でも知られる建築家、池辺陽(きよし)が設計した。複数の地権者が長屋のように共同で建てる「共同建築様式」で、建物の2階部分が歩道上にせり出した構造は当時の日本に例がなく、先進的と注目された。

1960年ごろ、多くの車が行き交う「アーケード名店街」(沼津市提供)

 防火建築に詳しい静岡理工科大の脇坂圭一教授によると、防火建築帯は3階建て以上の鉄筋コンクリート造りで、アーケード名店街のように1階が店舗、2階が住居となっていることが多い。61年に同法が廃止されるまでに全国84都市、総延長38.8キロに渡って建てられたが、老朽化に直面し既に解体された建物もあり、どれだけ現存するか定かではない。

◆1階が店舗、2階が住宅 「横のデパート」と称された

 アーケード名店街は最盛期の60年代ごろには60店舗ほどが軒を連ね、にぎわいを誇ったが、沼津駅前に百貨店の出店が相次いだことなどで徐々に活力が失われた。現在はシャッターが閉まったままの店が目立ち、営業する店はまばらだ。  地権者らでつくる「町方町・通横町第一地区市街地再開発組合」の理事長で、茶店を営んできた水口隆太さん(69)は「食品、衣類、雑貨などいろいろな店が並び、『横のデパート』と言われた。休日は道路にお客さんの行列ができるほどだった」とにぎわいを懐かしむ。  住民が高齢化したことや、建物が耐震基準を満たしていないことを踏まえ、2006年から再開発の検討が始まった。地権者らの合意形成が難航したが、11年の東日本大震災後に危機感が共有され、合意に至った。  再開発対象エリアは1.8ヘクタールで、そのうち0.3ヘクタールが最初に再開発される。新しい建物は地下2階、地上10階建てで、1階に店舗、2階以上に住宅約105戸が入る。総事業費約79億円のうち約45億円を国、県、市の補助金でまかない、名店街に似た街並みをつくることを目指し、25年に着工予定だ。

◆26、27日に建物内部の見学会

 解体を前に歴史ある建物を記憶に残してもらいたいと、組合は26、27両日の午前10時~午後3時に建物内部の見学会を開く。予約は不要で、組合事務所前で受け付ける。 

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