インターネット上のウソや誤情報の対策を議論する総務省の有識者会議がまとめた提言案に対し、日本新聞協会は20日、意見を表明した。SNSを運営するプラットフォーム(PF)事業者の責務をより強く打ち出すよう指摘。一方で「知る権利」を守る観点から政府による報道への法的規制につながらないよう慎重な検討を求めた。
有識者会議は7月、PF事業者に対して投稿の削除やアカウント停止を含む対応を迅速化させる制度作りを政府に要請する提言案をまとめた。総務省は法制化に向け、パブリックコメントの募集を行った。
SNSでは過激な内容で利用者の関心を集めて収入につなげる「アテンション・エコノミー」を背景に、真偽不明な情報が流通・拡散しやすい。協会は「課題を引き起こしているのはPF事業者のサービス設計によるところが大きい」と指摘。提言案にはPF事業者による主体的な取り組みの必要性が十分に記載されていないとして「事業者の責務をより強く打ち出すべきだ」と求めた。
ネット上の情報の真偽を監視する「ファクトチェック」に関して、新聞やテレビといったメディアが担う役割や責務も、提言案に盛り込まれた。
協会は「権力に対しては日々検証・報道している。不確かな情報が社会に重大な影響を与えかねない際は、報道の役割を果たすため、積極的に真偽検証に取り組んでいる」と主張。一方で「ファクトチェックの定義について議論がつくされたとは言えないなか、伝統メディアが『ファクトチェックの推進』に責務を負うかのような表現には違和感を覚える」と指摘した。
提言案では、PF事業者やメディアなどのステークホルダーによる連携・協力の枠組みを整備するとし、各社の協議に機能不全が生じた場合は「補完的に政府が関与する」とも記述された。協会は「取材・報道に関わる活動に影響を及ぼす可能性がある。万が一、報道機関への法的規制につながるようなことがあれば、国民の知る権利が毀損(きそん)されかねない」と主張した。(上地兼太郎)
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