◆約4割「ルールをよく知らない」
記者の自宅最寄りの通勤路でも、歩道を猛スピードで走る自転車をよく見かける。「危ない。いつか事故が起こるのでは」と心配していたところ、先日歩道上で自転車と歩行者の事故が起きたようで、警察署が情報を求める看板を設置していた。車道を右側通行し、逆走する自転車=東京都北区赤羽で
実際、自転車関連事故の割合は増加している。警察庁によると、2023年度の自転車関連事故は7万2339件で前年より2354件増加。全交通事故に占める構成比は23.5%で、2017年以降、7年連続で増加傾向にある。 実は、事故防止のため、道交法では自転車の交通ルールを定めている。しかし、歩道を走っていた江東区の女性会社員(46)は「細かいルールは知らない」と話し、「車道によく車が止まっているし、歩道を走っちゃうことも多い」と語った。 警察庁が昨年行ったアンケート結果でも、自転車の交通ルールを守らない理由として「ルールをよく知らない」が約4割を占めて最も高かった。◆「自転車は車のなかま」で車道通行が原則
警察庁によると、自転車は馬車などと同じ軽車両と位置づけられている。 一方、歩道は、歩行者の通行のために区画されており、歩行者の通行の安全を確保することが最優先。このため、「車のなかま」の自転車は、歩道と車道の区別のあるところは原則として車道の左側を走らなければならない。駐輪場と自転車=名古屋市で
◆歩道を通行できる場合も細かいルール
例外的に歩道を通行できるのは ・「普通自転車歩道通行可」の標識や標示があるとき(自転車歩行者道)・13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、身体の不自由な人が自転車を運転しているとき
・道路工事や連続した駐車車両、車道で自動車の交通量が著しく多い場合など、車道の左側部分を通行するのが困難な場合
などだ。 こうした場合、車道の両側に歩道がある場合はどちらを通行しても良いが、 ・自転車は車道寄りの部分を徐行しなければならない と定められている。 警察庁は、車道寄りを走らなければならない理由は、歩道脇の店舗や施設に歩行者が出入りすることを想定して「歩行者の通行が少ないと考えられる歩道における車道寄りの部分を徐行しなければならない」と説明する。警察庁のアンケートでは、このルールを守れているのは48.7%だった。 一方、車道のわきにある「路側帯」を走る場合は、進行方向に向かって左側の路側帯しか通行できない。
◆自転車の青色の表示の違いは?
一方、青色の表示などで自転車が通行する場所を示す「自転車通行空間」もある。東京都によると、大きく分けて4つの種類がある。 都道約2200キロのうち、河川敷などを利用した自転車歩行者道を含め、計371キロが自転車通行空間として整備されている。都は2030年度までに、900キロを整備する計画だ。都の担当者は「自転車を利用する社会になっていく中、整備を進めていきたい」としているが「道路の幅が狭い場所は、なかなか整備できない現状もある」とこぼす。◆「主に歩道通行」が15%
一方、自転車が原則として車道を走らなければならないといっても、歩道を走る自転車が多い現状がある。 東京都が昨年478人に行った調査によると、94%以上が「自転車は車道の左側通行」の原則を知っていた。一方、歩道と車道の区別がある道路で「主に歩道を通行する」が15%、「車道と歩道の両方」も35%いた。 なぜ車道を通行しないのか。複数回答で「自動車と接触しそうだから」が90%、「路上駐車車両があり、通行しにくいから」が67%と続いた。道路整備に必要な施策として、約61%が「自転車通行空間の確保」を挙げた。 自由回答では、「路上駐車している車が多く、自転車で走行する際、安全に車道側を通れないことが多い」「子連れで自転車を漕いでいると非常に不安」「車を運転しているとき、自転車を巻き込んでしまわないかヒヤヒヤする」と、自転車が車道を走行する危険性を指摘する意見が寄せられた。 「歩道を猛スピードで走行している自転車を見かけることも多い」と、歩道を走る自転車を指摘する声もあった。◆「自転車と歩行者が混乱している」
交通政策に詳しい東京大生産技術研究所リサーチフェローの牧野浩志さんは、子どもなどが自転車で車道の左側を走るのは危険な一方、歩道では、自転車と歩行者の混乱が生じていると指摘する。 自転車が例外的に歩道を通行する場合、車道の両側に歩道がある場合はどちら側を使っても良いため「自転車の右側通行と左側通行が混在する」。また、自転車利用者によっては、歩く場合と同じ感覚で左右の区別なく通行する人や、車道と同じく左側通行を徹底する人もいて、歩道上で歩く場所が決まっていない歩行者も含めて混乱していると指摘する。 牧野さんは混乱防止のため「自転車専用通行帯や歩道上の自転車通行部分などを整備し、自転車の通行空間を確保すべきだ」とハード面での対策を訴える。 一方、自転車通行空間がない場所では、子どもなどが車道を走るのが危険な場合もあるとして「歩行者と自転車が混在する場合、左側通行を基本としたシンプルな通行方法にすることが重要だ」と話した。「ニュースあなた発」は、読者の皆さんの投稿や情報提供をもとに、本紙記者が取材し、記事にする企画です。身の回りのモヤモヤや疑問から不正の告発まで、広く情報をお待ちしています。東京新聞ホームページの専用フォームや無料通信アプリLINE(ライン)から調査依頼を受け付けています。秘密は厳守します。詳しくはこちらから。
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