「タイミングが遅い」「もう十分」—。14日に自民党総裁選への不出馬を表明した岸田文雄首相に、首都圏の党関係者や有権者からは、政権運営への批判やトップを退く時機に疑問を呈する声が上がった。

◆「また政治とカネの問題は起こる」

記者会見する岸田首相と質問のため挙手する記者(手前)

 「自民党が変わる第一歩は自分が身を引くこと」。岸田首相は14日午前11時半からの記者会見でこう述べ、派閥の裏金事件などで広がった政治不信を払拭するための決断だと強調した。  岸田首相の説明に東京・新橋を歩く人たちは手厳しい。千葉市の無職男性(73)は「自分では次の衆院選に勝てない、と思ったのが本音だろう。長年、自民党を支持してきたが、岸田政権は魅力がない。もう十分だ」と振り返った。  東京都小平市の主婦(64)も「トップを変えたぐらいで自民党は変わらないんじゃないの。また政治とカネの問題は起こると思う。もっと根本的に改革しないと」と注文を付けた。

◆地方の自民関係者の声は…「どこか人ごと」

 「首相が代わるべきだという地方議員の声は結構多くあった。党の発展のための決断だったのでは」と、自民党都連幹事長の菅野弘一都議は話した。内閣支持率が低迷する中、7月の都議補選で2勝6敗と惨敗。来年の都議選に向け、立て直しを迫られている。「体制を刷新して、党内を結束させられるようなリーダーシップのある方に総裁になってほしい」  「支持率の低迷が自分のせいと思っていなかったのでは。どこか人ごとで、決断のタイミングが遅い」と憤ったのは神奈川県の男性県議。党県連は5月の党本部との車座対話で、裏金事件に関連し「国民をなめるな」と不満を表明した。  菅義偉前首相の影響力が強いとされる党横浜市連が6月に開いた会合では、幹部から首相への退陣要求も飛び出した。党県連幹事長の梅沢裕之県議は、総裁選を通じ「政治の信頼回復につなげられるよう努める」などとコメントを出した。

◆「潔く辞めるということ。英断ですよ」と桜田義孝氏

 「(衆院選で)同志の討ち死にを避けるため、潔く辞めるということ。英断ですよ」。党千葉県連会長の桜田義孝衆院議員は評価した。党内の中堅・若手議員らの間で総裁選出馬を推す声がある小林鷹之前経済安全保障担当相(千葉2区)については「政策能力があって人も良い。出るなら応援したい」と期待した。  2021年の前回総裁選で、全国に先駆けて党埼玉県連の有志と岸田氏を推薦する会をつくった県連幹事長の小谷野五雄県議は「日本のリーダーシップを取れる人だと考えた。ただ、これだけ国民の信頼を失ってしまったからには深く反省をし、新たなスタートを切らないといけない」と語った。


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