8日に気象庁が発表した南海トラフ地震臨時情報を巡り、首都圏の自治体では情報収集態勢を強化するなど警戒感を強めている。沿岸部では人出が例年と変わらない海水浴場もある一方、自治体が遊泳禁止にしたり、宿泊施設でキャンセルが出るなどの影響も出た。

◆変わらずにぎわう由比ガ浜海水浴場

海水浴客でにぎわう由比ガ浜海水浴場=8日、神奈川県鎌倉市で

 9日も多くの人でにぎわっていたのは、神奈川県鎌倉市の由比ガ浜海水浴場。家族4人で横浜市から海水浴に訪れていた男性(44)は「やめようかとも考えたが、警報ではなかったので来た。あまり気にしすぎて生活を変えるのもどうかと思った」。  市内の海の家でつくる市海浜組合連合会の野田太一代表(52)は東京新聞の取材に「どうなるかと思ったが、お客さんの数は変わりない」と話した。野田さんによると、市から備えを見直すよう8日に連絡があり、それぞれの海の家で避難経路とハザードマップを確認。「市と連携してしっかり備えていきたい」と表情を引き締めていた。  一方、同県平塚市は、湘南ベルマーレひらつかビーチパーク海水浴場を15日まで遊泳禁止とした。  「地震の可能性が高まっているのに、来てほしいとは言えない」と声を落としたのは、三浦市の海岸沿いにある民宿「一郎丸」を営む鈴木優子さん(58)。「津波が心配」として3連休初日の10日の宿泊予定が1件キャンセルされたほか「(宿の)目の前の海岸からすぐ避難できるか」などの問い合わせが複数寄せられたという。

◆「島しょ地域はすぐに避難できる準備を」

 首都圏の自治体は8日夜以降、海に面した島しょ部などを中心に情報収集や発信を強化している。

東京都災害対策本部会議に自宅からオンラインで参加した小池百合子知事=8日、東京都庁で

 東京都は8日夜、対策本部会議を開き、本部長の小池百合子知事が都民に対し、「日ごろの備えを再確認し、島しょ地域はすぐに避難できる準備を」との声明を出した。  都の被害想定で最大約28メートルの津波が到来する新島村は、避難が難しい高齢者ら約50人の住民の家を職員が訪ね、避難方法を巡る要望などを聞いて回った。観光客への情報提供も課題で、大島町防災対策室は「利用客の求めがあれば、避難場所の紹介をするよう観光施設に呼びかけている」。  23区では品川区や江戸川区などで幹部職員らが発生時の対応を協議。足立区は連休中も職員2人が出勤し、情報収集を行う。大田区はホームページで備えを呼びかけた。  沿岸部に18市町村がある千葉県も、災害対応の確認を進める。県内最大の11メートルの津波が想定される館山市は、携帯電話の予備バッテリーの充電など避難に向けての準備を促した。銚子市は9日に市内海水浴場で予定していた津波避難訓練を急きょ中止に。海岸での活動を自粛するためという。  神奈川県は今後1週間ほど、情報収集態勢などを強化。黒岩祐治知事は県民に家具の固定や避難経路の確認などを求めた。 

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