東京女子医科大学では、岩本前理事長が去年までの10年間トップの代表理事を務めていた同窓会組織「至誠会」をめぐって不正な経理処理があったとして、警視庁の捜索を受けたほか、会への寄付額が人事評価や推薦入試の過程で考慮されていたことなどが明らかになっています。

大学が設置した第三者委員会は、一連の問題の背景に岩本前理事長の「一強」体制があり、理事会も機能不全に陥っていたとして、経営陣の抜本的な改革が必要だとする報告書を公表していました。

大学によりますと、7日夕方、臨時の理事会が開かれ、岩本理事長の解任について理事の過半数が賛成し、7日付けで解任したということです。

当面の後任の理事長として肥塚直美常務理事が選任されたということです。

岩本前理事長は、今月5日に大学で開かれた教職員を対象にした説明会で、一連の混乱を謝罪した一方、早期の辞任は明言せず、理事たちからは直ちに辞任するよう迫る意見が相次いでいました。

大学は今後、第三者委員会の指摘を踏まえて再発防止策や改善計画を策定することにしています。

東京女子医科大学とは

東京女子医科大学は、東京 新宿区にある私立大学で、国内で唯一、女子学生のみを対象に医学教育を行う大学です。

1900年に東京女医学校として創立され、1952年に現在の東京女子医科大学となりました。

大学には医学部と看護学部のほか、大学院や大学病院、医療センターなどがあります。

また、法人として看護専門学校や東洋医学研究所などを運営しています。

事業報告書によりますと、去年5月1日の時点で、学生数は1300人余り、教職員や研修生は合わせておよそ5700人となっています。

役員は、理事長を含む理事11人と監事が2人となっています。

東京女子医大の同窓会組織めぐる問題

東京女子医科大学の同窓会組織「至誠会」をめぐっては、岩本絹子前理事長が去年までの10年間にわたってトップの代表理事を務めていて、さまざまな問題が明らかになっています。

1つは推薦入試です。

大学では、卒業生や在校生が3親等以内の親族にいる受験生を対象に、至誠会が審査を行って推薦する入試が行われています。

その過程で、至誠会に提出する「審査依頼書」に、受験生の親族による大学や至誠会への寄付額などを申告する欄があり、「貢献度」として点数化され、審査の際に加算されていました。

その結果、本来なら推薦を受けられた一部の受験生で、寄付をしていなかったことから推薦を受けられなかった可能性が出ています。

また、卒業生の教員が採用や昇格を希望する際にも至誠会への寄付実績や会合などへの出席回数が評価の対象になっていて、こうした人事でも寄付額などが考慮されていたことが分かっています。

さらに不透明な資金の流れも明らかになっています。

至誠会から勤務実態のない職員におよそ2000万円の給与が不正に支払われた疑いが出ていて、警視庁がことし3月、特別背任の疑いで大学本部や岩本前理事長の自宅などを一斉に捜索しました。

一連の問題を受けて大学が設置した第三者委員会が調査を行い、8月2日に報告書を公表しました。

その中で、不正な経理処理については、至誠会から大学に出向した職員に給与が「過大」あるいは「二重」に支払われた疑いが濃厚だとしたほか、前理事長の知人が代表を務める会社と大学法人の間で結んだコンサルティング契約で、会社への支払いが前理事長側に還流した可能性が高いなどと指摘しています。

そして、岩本前理事長について、推薦入試や人事の選考で寄付を求める発想を持ち込んだことや、不正な経理処理に加えて、教職員の人件費を抑える一方で、みずからの報酬額は2023年度で2015年度と比べて72%増額させるなどしている点から、金銭や金もうけに対する強い執着心を指摘しています。

そのうえで、異論を述べた人物に報復が疑われる人事を行うなど、問題の背景には「岩本一強」体制があり、理事会も機能不全に陥っていたとして、抜本的な改革の必要性を求めています。

国に適切な指導求めた教授「普通の医療ができる状況に」

東京女子医科大学をめぐっては、7月2日、大学病院に勤める教授など医師7人が文部科学省を訪れ、「社会における信頼を著しく損なっている」などとして国に適切な指導を求めていました。

その1人、本田五郎教授は、第三者委員会が一連の問題について、岩本前理事長の「一強」体制が背景にあり、理事会も機能不全に陥っていたと指摘したことを受けて、「理事長の『一強』と言われた以上は、人が変わるほかない。そのうえで、理事会全員が責任を取って辞め、社会に対して責任を示してほしい」と話していました。

さらに「医療の安全はチームでチェックするもので、ガバナンスが大事だ。これまで大半の職員は言いたいことも言えない状況だった。みんなリスクを感じ、萎縮しながら医療を提供してきたので、普通の病院で普通の医療ができる状況に戻してほしい」と訴えていました。

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