現役最高齢の落語家、桂米丸(かつら・よねまる、本名須川勇=すがわ・いさむ)さんが1日、老衰のため、東京都内の病院で死去した。99歳だった。横浜市出身。葬儀は近親者で済ませた。

桂米丸さん(2019年、誕生日前のインタビューで)

 新作落語の第一人者。落語芸術協会の会長を長年務めた。弟子に桂歌丸さん(2018年に死去)、桂米助さんら。最後の高座は2019年9月、東京・新宿末広亭。   ◇  ◇  

◆昭和のジョーズ、平成のドローン…残した200編

 落語界の最高齢、99歳の四代目桂米丸さんが旅立った。90代半ばまで東京・新宿末広亭の高座に上がり、健在ぶりを発揮。晩年まで落語を創作し続けた「新作の鬼」だった。

2010年、芸協らくごまつりで会見する協会員ら。(左から)三遊亭遊三、桂歌丸、桂米丸、三笑亭笑三、三遊亭小遊三

 横浜生まれで戦後すぐの1946年、21歳で五代目古今亭今輔に入門。翌年、古今亭今児の名で二つ目で寄席デビューし、1949年に真打ちとなり四代目桂米丸を襲名した。異例のスピード昇進で、師匠の方針で前座修業はなかったといい、米丸さんは「精神的な苦痛で大きな試練だった」と後述している。  師匠譲りの新作派。生みだした落語は「200ぐらい」と言っていた。時代の風を敏感に読み、昭和には映画「ジョーズ」、平成には空飛ぶ「ドローン」をネタにした落語で爆笑を呼んだ。90歳を過ぎてからは、AI(人工知能)など最先端の技術に着目。人情味を注入したロボットを主人公にするなど、貪欲に創作を続けた。

◆ひらめいた…すかさずレシートの裏に

 「何度聴いても面白い、後世に残る落語を」が口ぐせ。四六時中ネタを考え、何かひらめくと、忘れないうちにレシートの裏にでも書き留めた。「キワモノは狙うなとよく言われるけれど、キワモノがウケる。ウケた時の喜びは新作をやる者にしか分からない」

「風呂に入ると血液の循環がよくなって新作のアイデアが浮かぶ」と語った桂米丸さん(2013年撮影)

 芸の下地になっていたのはおしゃれ心だった。米寿のころの取材では、白のタートルネックにベージュの上着、胸元に赤いチーフを忍ばせて現れ、「キザじゃないと噺(はなし)に艶がなくなる」と明かしてくれた。  最後の取材は、93歳のとき。令和の元号が発表されたばかりで、新しい時代に「元気が出てきた」と話した。穏やかな口調も芸のことになると熱を帯び、声高になった。そのひたむきな語り口が、耳に残っている。(ライター・神野栄子) 

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