東京電力福島第1原発事故で耕作をやめた農地が多い福島県浜通り。その一つ、飯舘村で東京新聞は条件の異なる農地2カ所を借り、ナタネの栽培実験を実施した。油への放射性セシウムの移行は非常に少ないとされるが本当なのか? 種子に少々汚染が残っていても、油にはほぼゼロという結果だった。(山川剛史)

農地A

農地B

 原発事故前は約6200人が農林業を中心に暮らしを営んでいた飯舘村。しかし、事故で状況は一変し、居住人口は約1500人にまで減り、耕作されない農地が非常に多い。寂しい光景に、日ごろから取材などに協力をしてくれている村民の伊藤延由(のぶよし)さん(80)や高橋幸雄さん(71)に「春、ナタネで農地を黄色く染めてみない?」と持ち掛けたのが、今回の栽培実験のきっかけ。

農地Aのナタネ油を測定する小豆川助教

 いずれの農地も除染で表土5センチほどがはぎ取られたが、カリウムや肥料の投与などの条件が異なり、栽培結果を比較する上でも好都合だった。カリウムをすき込んでおくと、植物がセシウムを吸い上げにくくなる。原発被災地で広くこの対策が取られている。対策ありの高橋さんの農地(A)のナタネは土からの移行率が低く、土にかなりの汚染が残るのり面近くで分別採取した種子の濃度もほぼ同じだった。一方、伊藤さんが管理する対策なしの農地(B)ではぐんと濃度も移行率も上がった。  しぼった油は東大の小豆川勝見助教にゲルマニウム半導体検出器で測定してもらったが、いずれも不検出。農地Bの油の検出下限値がやや高めなのは、収量が大幅に少なく、油は100ミリリットルしか用意できなかったためだが、測定画面を見てもセシウムの反応は見当たらなかった。

(昨年9月)種まき

(11月)冬越し

(今年6月下旬)刈り入れ

(7月初旬)ろ過

(7月初旬)とうみの選別



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