大館とんぶりを使った「とんぶりご飯」(JAあきた北提供)

 秋田県大館市の比内地域で江戸時代から栽培され「畑のキャビア」と呼ばれる伝統食材とんぶりが消滅の危機にひんしている。国内唯一の生産地として「大館とんぶり」のブランド名で出荷しているが、近年は後継者不足や猛暑・豪雨などの影響で出荷量が激減。生産者らは、これまで門外不出だった加工技術を地域外に伝えるなど、継承に力を注いでいる。(共同通信=本間優大)

 とんぶりは中国や欧州が原産の一年草「ホウキギ」の実の加工品。プチプチした食感が特徴で、ビタミンやミネラル、食物繊維を多く含む。

 平安時代に唐から伝わり、強心や利尿作用がある漢方として重用。江戸時代の飢饉をきっかけに旧比内町(現大館市)で食用の生産が始まった。特産のブリコ(ハタハタの卵)に似ており「とうぶりこ」と呼ばれたのが名前の由来とされる。

 毎年春に種がまかれ、9月ごろから収穫が始まる。水洗いや選別など加工はほぼ手作業。加工所は比内地域だけに置かれ、その技術は地域限定の秘密とされてきた。

 しかし、最盛期の1990年度に100人を超えた生産者は高齢化や後継者不足のため昨年度は5人にまで減少。400トン以上あった出荷量も高温や長雨、害虫の影響で約21トンに落ち込んだ。

 2017年、地域の農林水産物や食品をブランドとして保護する地理的表示(GI)保護制度に大館とんぶりとして登録されると、伝統維持への機運が高まった。生産者たちは種のまき方や加工技術を比内地域以外の市内の農家に伝える取り組みを始め、地元JAも農機具の購入などを支援した。

 父から受け継ぎ、約20年間生産に携わる本間均さん(71)は「食文化を維持するためにも担い手を増やし、出荷量を確保しなければ。秘密と言っていられない」と話す。今年は新たに比内地域以外の2人がとんぶりの生産を始めた。「同じ志を持つ仲間と一緒に頑張りたい」と意気込む。

 とんぶりを知り尽くす本間さんのおすすめの食べ方は「生ショウガとしょうゆを合わせたショウガとんぶり」。生育が順調に進めば、10月末ごろからJAあきた北のホームページなどでも購入できるという。

とんぶりの畑で苗木の様子を見る本間均さん=6月、秋田県大館市
大館とんぶりを使った「ショウガとんぶり」(JAあきた北提供)
秋田県大館市のとんぶり畑=6月
秋田県大館市・比内地域

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