入手困難な希少品がコレクターや転売業者らの間で高額取引される「トレーディングカード」を巡るトラブルが増加し、国民生活センターが注意を促している。人気の高い「ポケモンカード」を売ったものの、代金が支払われないまま買い取り店と連絡が取れなくなった静岡県の男性会社員(31)は、東京新聞の取材に「悔しいが打つ手がない」と憤りを語った。(佐藤航)

 ポケモンカード ゲームソフト「ポケットモンスター」の世界をテーマにしたカードゲーム。集めたカードを使って対戦を楽しむ「トレーディングカード」の一種で、世界中にコレクターがいる。すでに販売が終了した希少品は特に人気が高く、投資目的の売買もあって価格が高騰している。

 男性は昨年7月、ポケモンカードのコレクションの一部を売ろうと、東京都台東区の買い取り店「ソウルバス」を訪れた。交流サイト(SNS)で情報収集したところ、最も高値を提示していたのが同店だったという。店には、特に入手困難で人気が高い「がんばリーリエ」と呼ばれるカードなど2枚を持ち込んだ。

◆チェックわずか5分、提示された買い取り額は500万円

被害男性が「ソウルバス」に売ったポケモンカード「がんばリーリエ」

 店主の男性は拡大鏡などでカードの状態をチェックし、わずか5分で買い取り価格を提示した。「リーリエ」が500万円、もう1枚が82万円。男性は予想以上の高値に、その場で買い取り同意書に署名した。  ところが、代金は一向に振り込まれない。LINEで催促しても「準備が整わない」と言い訳を繰り返すばかりで、今年1月下旬には返信も来なくなった。カードに割り振られている通し番号を検索すると、すでに他の店に転売されていることが分かった。

◆代金振り込みなく店とは音信不通に

買取店「ソウルバス」が入っていた雑居ビルの前には、今も同店の看板が残されていた

 男性は昨年8月に警視庁下谷署に相談。「まだ代金が振り込まれる可能性もある」と言われ、被害届の受理には至っていない。しかし、ソウルバスで被害に遭ったとの声は複数上がっており、男性を含む被害者約30人はグループをつくって連絡を取り合っている。中には、1000万円以上の代金が未払いとなっている人もいるという。  ソウルバスは昨年夏ごろに閉店し、運営会社も今年6月末に経営者が代わった。当時の代表取締役で店主だった男性は本紙の取材に「自分はある人の指示を受け、買い取りの窓口をやっていただけ」と主張。「自分もその人と連絡が取れなくなって困っている。他にも買い取り店をやっていて、そちらでもトラブルになっているようだ」と打ち明けた。  国民生活センターによると、ポケモンカードなどの「トレーディングカード」を巡る売買トラブルの相談件数は、2020年度から21年度にかけて1.5倍に増えた。22、23年度も増加傾向が続いているといい、「カードを売る場合、事前に買い取り店や個人間取引の相手方の評判を十分にチェックしてほしい」と呼びかけている。 

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