◆3日から東京都内で上映

 「武士道」を世界に広め、戦前の国際連盟で事務次長も務めた新渡戸稲造(にとべいなぞう、1862~1933年)。あまり知られていない業績の一つに「遠友(えんゆう)夜学校」がある。貧しくて学校に通えない人々を、無料で教育した。その精神を現代に受け継ぐ人々の姿を追ったドキュメンタリー映画「新渡戸の夢~学ぶことは生きる証~」が、3日から東京都内で上映される。(榎本哲也)

映画「新渡戸の夢」のワンシーン=2024新渡戸の夢映画製作委員会提供

◆学ぶ意欲がある貧しい人のために開校

遠友夜学校の卒業式=1920年代撮影、北海道大学大学文書館提供

 遠友夜学校は1894(明治27)年、新渡戸が札幌農学校(北海道大の前身)教授だった32歳の時、米国人妻メリーとともに、現在の札幌市中央区の豊平川近くに開設した。  学ぶ意欲があるのに、昼間は学校に通えない子どもらが対象。授業料無料、男女共学、年齢制限なし。当時の学校としては画期的だった。  教員は、札幌農学校の学生ら。富や名誉よりも人格形成を重んじた教育が行われ、新渡戸の死去後も続き、1944(昭和19)年の閉校までの50年間に、1170人の青少年が学んだ。

◆監督「受け継がれる新渡戸の精神に触れてほしい」

新渡戸稲造=盛岡市先人記念館提供

 映画は、遠友夜学校の精神を受け継ぐ現代の人々を追う。その一つが「平成遠友夜学校」。北大構内の「遠友学舎」を学びやとする無料の市民講座だ。  もう一つが、90年開設の「札幌遠友塾自主夜間中学」。幼少期に義務教育を受けられなかった人など500人以上が学んだ。  東京を拠点に、児童生徒に新渡戸の精神を伝える「こども武士道ワークショップ」を続けている高橋和の助さんも登場する。  撮影した野沢和之監督は在日コリアンやハンセン病などをテーマに、ドキュメンタリー映画を製作してきた。「現代は政治も社会も、モラル低下がひどすぎる」と指摘し、「今の時代にこそ、少数者への思いやりが必要」と強調。「貧しい人に学ぶ喜びを提供し続けた新渡戸の精神と、それを受け継ぐ現代の人々の思いに、映画を通じて触れていただければ。現役の教員をはじめ、多くの方に見ていただきたい」と話している。

映画について語る野沢和之監督

   ◇   ◇      【主な上映予定】※詳細は各館へ  ▽シネマハウス大塚
 (JR山手線大塚駅北口徒歩7分、都電荒川線巣鴨新田から徒歩3分。都立文京高校正門前)
 8月3、10、17、24、31日
 午前10時45分~、午後1時30分~  ▽大泉学園ゆめりあホール
 (西武池袋線大泉学園駅徒歩1分)
 8月11日 午後7時~  ▽前橋シネマハウス
 (JR両毛線前橋駅徒歩10分)
 9月21日~10月11日(火曜休館) 

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