香川県立三本松高校(東かがわ市)の定時制4年生の大風湊さん(18)は三木町の自宅から自転車で高校へ通っている。しかし、6月26日は自転車の調子が悪く、電車で行くことにした。

 午後5時ごろに駅へ向かって歩いていると、後ろから声をかけられた。

 「すいません、助けてもらえないですか?」

 振り返ると小さな女の子が1人。迷子のようだった。

 女の子は5歳。1人で外にいる理由を尋ねたが、前日のことを説明するばかり。「(両親に)置いて行かれた」と言い、パニックになっている様子だった。すぐ近くの自宅に案内してくれたが、両親は夜まで帰ってこないと話した。

 あと30分ほどで始業だったが、「この子を放っておけない」と思った。高校へ電話して状況を説明すると、「お隣さんに預けたり、交番で相談したりしたらどうか」とアドバイスをもらった。

 女の子の自宅の隣人に相談したが、女の子自身が交番の方がいいと言ったため、2.5キロほど離れた交番へ2人で向かうことにした。

玄関に残した置き手紙、母の涙にほっとした

 帰宅した女の子の両親が心配しないよう、玄関に置き手紙を残した。大風さんの名前と電話番号、状況の説明文と「さみしかった。早く帰って来てね」と女の子から聞き取った気持ちを代筆して加えた。

 普段からいとこの子どもらと遊んでいるという大風さん。泣いている女の子を不安にさせないよう、歩きながらポケモンの話などをして声をかけ続けた。

 午後7時半ごろ、交番へ到着した。警察官へ事情を説明していると、置き手紙を見た両親が迎えに来た。母親は手紙を握りしめ泣いていた。「女の子がとても大切にされているんだと思いました」と大風さん。

 女の子は、父親が母親を迎えに行く間の留守番として家に残されていたという。ただ、女の子としては前日に父親から怒られたことと相まって、置いて行かれたと感じたようだった。

 7月19日、さぬき署は迷子の発見、保護に貢献したとして、大風さんに感謝状を贈った。

 大風さんは「女の子が何事もなく親御さんに会えてよかった。自分が偶然いてよかった」と笑顔で語った。(土居恭子)

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