高額な飲食料金を請求し女性客に借金を負わせる悪質なホストクラブの問題を受け警察庁は31日、対策を議論する有識者検討会の初会合を開いた。「売り掛け」による客の支払い能力を超えた請求や、性風俗店への違法なあっせんが表面化している。ホストクラブを規制している風俗営業法の改正も視野に議論を進める。

検討会は学識者、社交飲食店の業界関係者らで構成。31日の初会合ではホストクラブが集まる東京都新宿区歌舞伎町の商店街振興組合や、売掛金などに悩む女性を支援する団体へヒアリングを実施する。

風営法は「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持」することを目的とし、店舗の営業形態に応じて規制している。ホストクラブはキャバクラなどと同じ「客を接待して飲食などさせる営業」に該当する。

営業は店舗のある都道府県公安委員会の許可が必要で、原則午前0時以降は営業できない。客室の面積や構造、照明の明るさといった要件があり、18歳未満の入店は禁止されている。警察庁によると、ホストクラブは全国に約1000店あるとされる。

問題となっているのは高額な飲食代だ。女性客が請求額を支払えない場合にホストが肩代わりする売り掛けを重ね、客が多額の借金を負う構図が指摘されている。

風俗店への違法な紹介も後を絶たない。警視庁は6月、売掛金回収のため当時19歳の女性客を風俗店で働かせたとして、東京・新宿のホストとスカウトの男3人を職業安定法違反(有害業務紹介)容疑で逮捕した。

全国の警察は2023年1月〜24年5月、こうした性風俗店への違法紹介といった容疑で77人のホストを摘発。23年11〜12月に33都道府県の延べ729店に対し立ち入り検査した。今年1〜2月には料金未表示といった問題が判明した203件に業務停止命令を含む行政処分を出した。

6月に東京・歌舞伎町を視察した松村祥史国家公安委員長は「いま一歩踏み込んだ対策が必要だ」と強調した。

女性支援に取り組むNPO法人「ぱっぷす」(東京)の理事長、金尻カズナさんは「社会経験が少ない若年層が被害に遭っている」と指摘する。「不当で高額な飲食代を取り消すための法整備や、社会復帰に向けた支援の枠組みが必要だ」と訴える。

警察庁は悪質なホストクラブを巡り、SNSを通じて集散する新たな組織形態「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」との関係にも警戒する。得られた収益がトクリュウの中枢に流れ資金源となっている可能性があるとみて取り締まりを強化する。

検討会では高額請求に至る営業手法の実態を把握したうえで、女性客が違法なあっせんを受けないようにする手立てや、収益がトクリュウに流れないための方策を議論するとみられる。

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