稲垣則子さんが写った写真を手に当時を振り返る女性

 1995年7月に東京都八王子市のスーパー「ナンペイ大和田店」で勤務する女性3人が射殺された強盗殺人事件は、未解決のまま30日で発生から29年となった。「また来るね」。犠牲になったパート稲垣則子さん=当時(47)=の行きつけの飲食店で働き、事件前夜も一緒だった女性(82)は稲垣さんの最後の言葉を振り返り「彼女を忘れたことはない」と話す。

 「介護の試験に受かったら、あのウイスキーを入れようと思う」。事件前日の土曜夜、店を訪れた稲垣さんは目を輝かせながらそう話した。八王子市内で経営していたスナックをたたみ、介護関係の資格取得を目指していると聞いていた。「月曜にまた来るね」。いつものように見送った。

 呉服店やブティックで働いていた時期もあった稲垣さん。女性は仕事の相談などに度々乗っていた。気の強い一面もあったが、スナックをやめてから次第に穏やかな表情を見せるように。「少女のように明るく笑う人だった。事件当時は険しい表情の顔写真ばかりが報道され、心苦しかった」

 葬儀には多くの知人らが訪れ、愛された存在だったと感じた。女性は大切にしていた数珠をひつぎに入れた。

1995年7月、女性3人が射殺された東京都八王子市のスーパー「ナンペイ大和田店」を調べる捜査員

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