能登半島地震で被災した外国人の体験を集めた記録誌「~あの時わたしは~」が完成した。異国の地で激しい揺れに襲われ、鳴り響く津波警報におびえ、戸惑った外国人たち。教訓を後世に伝えようと、石川県七尾市国際交流協会が半年をかけて、12の国と地域の計63人の生々しい声を一冊にまとめた。(染谷明良)

完成した記録誌を読む被災の体験記を寄稿した外国語指導助手(ALT)ら=石川県七尾市内で

◆「ありのままの気持ち、見聞きしたことを自分の言葉で」

 「靴を履く余裕もなく、はだしで飛び出した」。慣れない土地で最大震度7に遭遇した経験がつづられている。余震の恐怖の中、日本語が分からず、コミュニティー内で協力し合った様子が伝わる。  協会は2月上旬、交流サイト(SNS)やメールを使って体験記を募集。市や商工会議所とも連携し、外国人のコミュニティーに情報を広げた。外国語指導助手(ALT)や技能実習生、ウクライナ避難民ら多様な外国人から声が届いた。スマートフォンやパソコンが使えない人からも、手書きでびっしり書かれたリポート用紙が寄せられた。  気持ちを正確に表現してもらうため、母国語で書いてもらい、翻訳した。A4判全76ページ。うち59ページに証言を詰め込んだ。協会理事長の大星三千代さん(76)は「人に見せることを意識せず、ありのままの気持ち、見たこと、感じたことを自分の言葉で書いてほしかった」と語る。

◆情報発信、支援場所への誘導…課題が明らかに

 七尾市で被災したALTは情報が錯綜(さくそう)して、どこに行き、何をすべきか分からない状況に陥り、コミュニティー内で連絡を取り合ってから、避難所に集まった経緯をつづった。「どこで情報を得られるのか分からず、自分たちで対処しなくてはならなかった」と振り返る。別の人の体験記には「英語で最新情報を得るのは大変だった」。たくさんの支援に感謝しつつ、外国人向けの災害情報の発信を巡る課題を明らかにした。  大星さんは「外国人が情報を得られず、支援場所にたどり着けないこともあった」と指摘し「慣れない土地で被災した外国人を、自分に置き換えて読んでほしい。この冊子を通して支援の輪を広げたい」と話す。非売品で、市内の図書館や市役所など公共施設に置く予定。 

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