全国学力テスト 小学6年生と中学3年生が対象

全国学力テストは文部科学省が毎年、小学6年生と中学3年生を対象に行っていて、ことしはおよそ186万人が「国語」と「算数・数学」のテストに参加し、29日結果が公表されました。

全国の国公私立の平均正答率は、小学校の国語が67.8%、算数が63.6%、中学校の国語が58.4%、数学が53%でした。

思考力や表現力などが必要な問題 平均正答率が低い

このうち課題となってきた思考力や表現力などが必要な問題を見ると、基礎的な知識が求められる問題と比べて平均正答率はいずれも低く、小学校の国語で3.8ポイント、算数で21.3ポイント、中学校の国語で6.6ポイント、数学では33.5ポイントと、特に算数と数学で大幅に下回っていました。

例えば中学校の数学では、ストーブの「強」と「弱」で灯油を使い切る時間にどれほど差があるか、使用時間と灯油の残量を示した数式とグラフから求め方を考えさせ、それを記述式で説明する力が問われましたが、各問題の正答率は8%や9%で課題が見られました。

文部科学省の相原康人学力調査室長は「記述式の問題の無解答率は以前より下がっていて、ある程度抵抗感なく問題に取り組めているとみられ、深い学びを届ける授業改善が進めば正答率の向上につながっていくのではないか。小中学校を通して児童や生徒が自分の考えを説明しあう授業を行うなど、思考力・判断力・表現力を育てていく必要がある」と話していました。

学力テストをめぐっては、今回から学習環境などに関する調査は1人1台配備された端末を使って全校でオンラインで回答する方式が取られていて、文部科学省は2027年度からテストも紙での試験を廃止し、全面的にオンライン化する方針を示しています。

勉強時間が減少する傾向続く

テストとあわせて実施されている生活習慣や学習環境などに関する調査では、勉強時間が減少する傾向が続いています。

調査で、学校の授業以外の勉強時間を聞いたところ平日では「30分未満」もしくは「全くしない」という回答が小学校で18%と5年前の調査から増え続け、中学校では17%と3年連続で増加しています。

休日も、「1時間未満」もしくは「全くしない」という回答が、小学校で51%、中学校で36%とここ数年増加しており、勉強時間が減少する傾向が続いています。

一方、ゲームをする時間が1日あたり「3時間以上」もしくは「4時間以上」という回答は、小学生で30%、中学生で29%と横ばいでした。

SNSや動画を視聴する時間が一日当たり「3時間以上」もしくは「4時間以上」という回答は、小学生では21%と前回より1ポイント増えほぼ横ばいで、中学生では32%と前回より3ポイント増えました。

学校以外での勉強時間が少ない人やゲームをする時間が長い人ほど、学力テストの平均正答率が低い傾向にありました。

文部科学省は、勉強時間の減少傾向については学力の低下につながっているかどうか、今後より詳しい分析をする必要があるとしています。

「地域や社会をよくするために何かしたい」増加

学力テストとあわせて実施された調査では、「地域や社会をよくするために何かしたい」という回答が小中学生ともに増加しました。

調査では、「地域や社会をよくするために何かしてみたいと思うか」と聞いたところ、「当てはまる」や「どちらかといえば当てはまる」と答えた割合は、小学生で84%と前回より7ポイント増え、中学生で76%と前回より12ポイント増えました。

増加について文部科学省は「制限のあったコロナ禍が明け、地域と関わる活動などができるようになったことの影響ではないか」と見ています。

また、こうした回答は「授業で学んだことは実生活で生かせる」とか「総合的な学習で課題を立て、調べて発表している」などと答えた児童や生徒ほど高い傾向にありました。

このほか、1人1台配備されたタブレットやパソコンなどのICT機器の活用状況を学校に聞いたところ、不登校の児童生徒がいる学校で授業配信などの支援に週1回以上活用したのは小学校で51%、中学校で58%でした。

また、外国人の児童生徒がいる学校で学習支援に週1回以上活用したのは小学校で56%、中学校で61%でした。

全体では、ICTを活用する効果を感じている児童生徒のうち、「学校に行くのが楽しい」といった幸福感などに関わる回答との相関関係が最も強く見られたのは、家にある本が「25冊以下」と少なかったグループで、文部科学省は「ICTが家庭環境による知識や学びの機会の格差をうめるうえで役立つ可能性がある」と分析しています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。