国際平和シンポジウム「核兵器廃絶への道~核の脅威、多様性でのりこえる」(朝日新聞社、長崎市、長崎平和推進協会主催)が27日、長崎市平野町の長崎原爆資料館ホールで開かれた。30回目となった今回は、依然として進まない核軍縮の現状と、緊迫する国際情勢のなか、その廃絶に向けて何ができるかを議論した。

 冒頭、米国の非核NGO「核時代平和財団」代表、イヴァナ・ヒューズさんが基調講演した。今年は、マーシャル諸島ビキニ環礁であった最大の水爆実験から70年。同諸島では放射線被害が続いていることに触れ、「立場は違えど、米国も日本も核兵器のない世界を作るための先導者となる責任を担っている」と語った。

 パネル討論で参加者からは、ウクライナやガザの情勢を念頭に、核をめぐる世界の状況がこの30年間で悪化しているという意見が相次いだ。

 核軍縮に詳しい大阪大学名誉教授の黒沢満さんは「国家ではなく、『人類』の安全保障という視点で核廃絶を考えるべきだ」。駐日カザフスタン大使館公使参事官のクルマンセイト・バトルハンさんは、旧ソ連から独立した国として唯一、核兵器禁止条約に批准していることを説明し「国際的な枠組みが今ほど必要なときはない」と述べた。

 鎮西学院学院長・姜尚中(カンサンジュン)さんも講演。国家主義が力を持ち、互いの「正義」をかざす今の社会は、戦争に向かってしまう危険性があると訴え、被爆者の声を聞き、体験を想像する大切さを訴えた。その後、長崎県被爆者手帳友の会副会長の三田村静子さんが自身の被爆や、娘をがんで亡くした経験をつづった紙芝居を朗読すると参加者はじっと聴き入った。

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 シンポジウムの内容は8月5日付朝刊で詳報します。(中山直樹)

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