能登半島地震では、ヒートポンプ式給湯器「エコキュート」や電気温水器の貯湯タンクが倒れる被害が相次ぎ、水道が復旧しても、多くの世帯でお湯が使えない生活を余儀なくされた。構造的に倒れる恐れが高い上、設置時期が古く国の基準を満たさないケースもあるとみられる。

能登半島地震で転倒したエコキュートの貯湯タンク(1月、石川県輪島市、住民提供)=共同

国民生活センターは「倒れるリスクを踏まえ、設置説明書通りに施工されているか確認を」と呼びかけている。

石川県輪島市の温泉施設「輪島カブーレ」では、地震から半年が過ぎた7月も、1日約200人が無料の入浴支援を利用する。

近くの会社員は、自宅室内に設置していたエコキュートが倒れた。すぐ業者に修理を依頼したが、見積書が届いたのは7月。費用は約100万円で、修理時期のめども立たない。当面は入浴支援を利用する予定だ。「利用時間は限られるし、施設によっても違う。自宅の風呂が使えたら……」とこぼした。

日本冷凍空調工業会などによると、エコキュートなどの貯湯式給湯器は光熱費を抑えられ、断水時はためた水を緊急用水として使えるメリットがある。ただ、貯湯タンクが高さ2メートルを超える商品も多く、地震で倒れやすい。

あるエコキュートの大手メーカーによると、能登半島地震でのこの会社への修理依頼は約120件に上るという。東日本大震災や熊本地震でも転倒例が多かった。

2013年、給湯器の転倒防止措置を義務付けた国土交通省の改正告示が施行。関係者は、能登半島地震での修理依頼について「13年より前の設置が圧倒的に多い印象だ」としており、告示の基準に適合しない給湯器が多く残っていたとみられる。

国民生活センターの担当者は「設置状況が不安なら、設置業者に確認してほしい。分からなければ消費生活センターに問い合わせを」と話した。

パナソニックやダイキン工業などの大手メーカーは問い合わせ窓口で、災害救助法が適用された新潟、富山、石川、福井4県の47市町村を対象に特別料金で点検・修理する対応を取っている。〔共同〕

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。