特殊詐欺の実行役などとして2023年に摘発された人のうち、SNS経由で加担した割合が4割を超え最多だったことが26日、警察庁の分析で分かった。SNSなどを通じ集散を繰り返す新たな集団「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の勢力拡大が鮮明になった。警察当局は組織性の解明を重視する従来の捜査手法の転換を迫られている。

警察庁は26日公表した24年版警察白書で、特殊詐欺の現金を受け取るといった実行役らの応募手段を初めて通年で分析した。実行役2373人のうちSNS経由は991人(41.8%)。求人サイト(3.5%)、ネット掲示板(2.4%)と合わせると5割近くがネット上での勧誘だった。

SNSではX(旧ツイッター)を中心に「即日即金」「高収入」とうたう募集が目立つ。犯罪グループに加わった後はメッセージが自動消去されるアプリでやりとりする集団が多い。実行役は首謀者や指示役の素性を知らないケースが大半だ。

23年の特殊詐欺被害額は452億円に上り、7年ぶりに400億円を超えた。勢力が増す一方、中枢への捜査は壁に直面している。23年に逮捕・書類送検した2455人のうち、首謀者やグループリーダーなど「中枢容疑者」は49人(2.0%)にとどまる。

トクリュウのような犯罪組織の台頭は「ルフィ」を名乗る男らに指示された22〜23年の広域強盗事件が浮き彫りにした。「闇バイト」が絡む犯罪は収まる兆しがなく、白書はトクリュウについて「市民社会に対する重大な脅威」と強調した。

警察は捜査手法の変革を急いでいる。かつては暴力団に対する捜査のように、犯罪組織の末端から幹部へ突き上げていく手法が中心だった。組織の関係性が薄いトクリュウでは実行役への指示系統から中枢に迫るのは難しい。

トクリュウへの捜査で重視するのは資金の流れだ。トクリュウは特殊詐欺だけでなく、違法オンラインカジノや悪質なホストクラブといった犯罪への関与も疑われる。「それぞれの収益が行き着く先に中枢に近いメンバーが潜む」と警察幹部はみる。

警察庁は資金経路を追うため、大規模な繁華街を管轄する各警察に捜査部門を横断した専従体制をつくったうえ、全国で約700人を増員した。

闇バイトの募集を抑止する取り組みも欠かせない。警察庁は23年9月、ネット上で犯罪実行者を募る投稿を「重要犯罪密接関連情報」の類型に加え、SNS事業者などに削除を要請している。同9〜12月の要請に基づき、24年1月までに2136件が削除された。

求人サイト側も対策を強化している。「バイトル」を運営するディップは24年1月、生成AI(人工知能)を活用し不審な求人を検知する仕組みを導入した。AIの活用により、目視のみでのチェックに比べて作業時間を約80%減らせるという。

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