石川県輪島市の伝統工芸・輪島塗に使う生漆を日に当てて精製する「天日黒目(てんぴぐろめ)」が23日、市内の「大徹八井(だいてつやつい)漆器工房」で行われた。能登半島地震で作業場が全壊し、一度は廃業を覚悟したという八井貴啓(たかひろ)社長(55)は「まさか、ここまでできるとは」と感慨深そうに話した。

◆「おわんを作り、皆さんに食事で使ってもらいたい」

全壊した作業場(奥)から救出した生漆と道具で「天日黒目」の作業をする八井貴啓社長=23日、石川県輪島市で

 例年の3分の1となる6キロを精製。職人らが小判形のおけに生漆を入れ、棒状の道具「かい」でこすり付けるように練り込んでいった。2時間ほどで水分が飛んで乳白色から茶色に。天日にさらすことで強度が増し、1年寝かせて上塗りに使うという。  5000点以上の商品があった作業場から救出できたのは1割程度。朝市通りにある自宅兼店舗も液状化で被災した。無事だったショールームを作業場に替え、市が整備した仮設工房も借りて作業を再開させた。八井さんは「塗りのおわんを作り、皆さんに食事で使ってもらいたい」と再起を誓った。(奥田哲平) 

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