阪神・淡路大震災後の建物解体作業に携わった男性(67)が悪性胸膜中皮腫と診断され、アスベスト(石綿)を吸い込んだことによる労災認定を受けたことがわかった。震災から30年近くたったいまも、アスベスト被害が続いている実態が改めて明らかになった。

 関西労働者安全センター(大阪市)などが22日、発表した。

 センターなどによると、阪神間に住む男性は1995年の阪神・淡路大震災発生当時、道路建設会社の神戸営業所で勤務。震災後は約2年間、神戸市内で国道上のがれき処理や建物の解体作業などをしていた。

 2022年4月に、せきなどの症状を訴え病院を受診し悪性胸膜中皮腫と診断された。男性は手術を受け、現在も通院して治療を受けているという。神戸西労働基準監督署が昨年10月、労災と認定した。

「当時の同僚も発症しないか心配」

 男性は関西労働者安全センターを通じて「当時の被災地は復旧・復興が最優先され、アスベストの危険性の認識はほとんどなく、解体工事現場は大量の粉じんが舞う最悪の環境でした。当時の職場の同僚も発症しないか心配です」とコメントを発表した。

 ひょうご労働安全衛生センターの西山和宏事務局長によると、これまで把握している県内の事例で、震災後の復旧作業などに関わり労災認定された人がアスベスト特有の中皮腫を発症した時期は07年~13年ごろの間だった。

 今回、男性が22年に発症したことから、西山事務局長は「まだまだ震災によるアスベスト被害が続いていると感じる」。

 中皮腫は潜伏期間が30~50年と言われていることや、震災後ボランティアなどで全国から被災地に人が集まったことなどを踏まえ、「全国で健康不安を抱えているかた、発症したかたは相談してほしい」と話した。

 ひょうご労働安全衛生センターでは、被災地ボランティア経験者を対象に、アスベストの健康被害の実態や現場の対策に関するアンケートを実施している。問い合わせや相談は「震災とアスベストホットライン」(078・382・2118)へ。(杉山あかり)

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