群馬県富岡市は、世界遺産の富岡製糸場で明治時代の官営期に働いていた女性労働者「工女」が作業着として身につけていた袴(はかま)を史実を基に製作した。市観光協会は、街なかを袴姿で歩く着用体験事業を始めた。

 袴は、富岡製糸場の女性労働環境の研究成果や古い写真を参考に、オリジナルの生地(小倉織)で製作した。ズボンやキュロットのように二股に割れた構造をしている馬乗り袴だ。

 富岡製糸場女性労働環境等研究委員会報告書(2022年)で女子作業服の変遷を担当したお茶の水女子大の難波知子准教授によると、官営期の作業服は袴だった。

 富岡製糸場では創業当初、フランス式繰糸器が導入され、作業台に繭を煮る「煮繭」という作業をするための鍋と、湯を沸かすための水管と蒸気管が設置された。ここで繭から糸を繰る工女は、椅子に腰かけて作業していた。

 当時の日本女性の服装は、きもので、袖の長い袂(たもと)は煮繭や繰糸をするには不向きだったと見られる。椅子に座って作業するため、きものの裾から脚が露出する恐れもあった。女性が袴を着用する習慣はなかったが、男性用の縞(しま)袴(ズボン状)を着用するようになったと考えられるという。

 写真や工女の証言をもとにすると、当時の縞袴は「小倉織」と呼ばれる綿でできた袴地が使用されていたと考えられる。工女が袴を「赤縞」や「白縞」と表現していたことなどから、今回の復元では、藍染めの青と白をベースに、縞柄の白の部分に細い赤縞を入れたデザインとした。

 市観光協会の工女袴の着用体験は、あさや呉服店で受け付けている。1万円(税込み)で、富岡製糸場入場券付き。問い合わせは市観光交流課(0274・62・5439)。(角津栄一)

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