広島市の松井一実市長が職員研修で戦前・戦中の「教育勅語」の一節を引用していることを受け、市民討論会「なぜ今 教育勅語なのか?」が13日、市内で開かれた。被爆者の切明(きりあけ)千枝子さん(94)が教育勅語を使った当時の教育を振り返った。

 切明さんが通った小学校には、教育勅語や天皇・皇后両陛下の写真を納めた奉安殿があったという。「登校するときに最敬礼した。おじぎの深さが足りないと先生から怒られた」。教育勅語が奉読されると、じっと頭を下げて聞かなければいけなかった。

 松井市長が研修で教育勅語を引用していたと知ったときは「なぜ今になって教育勅語なのかとびっくりした」という。教育勅語の本質は「いざという時には一身を捧げて皇室国家のために尽くせ」という部分にあると述べ、「市長はそのことを考えたことがあるのか。多くの人が集まって議論を重ねている実態を市長に届けないといけない」と批判した。

 討論会は「教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま」が主催し、会場やオンラインで約95人が参加した。

 松井市長は就任翌年の2012年から教育勅語の一節を職員研修で引用し続けている。今年度の新規採用職員研修でも「爾(なんじ)臣民 兄弟(けいてい)に 友に」で始まる一節を資料に引用し、新たに憲法前文の一部を併せて紹介した。(魚住あかり)

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