東海道新幹線で22日午前3時37分ごろ、愛知県蒲郡市内の上り線路上で夜間作業中の保守用車両2台が衝突し、いずれも脱線した。東海道新幹線は浜松―名古屋間で始発から運転見合わせが続き、ほかの区間でもダイヤが大幅に乱れた。復旧作業は午後7時ごろまで続く見込みで、運転再開の見通しは立っていないという。

 なぜ復旧は長引いているのか。

 JR東海によると、事故を起こした保守用車両は2台とも脱線し、自力走行できない状態となった。このため、線路に戻しただけでは動かせず、いったん運搬用の台車を使い、別の車両で牽引(けんいん)する作業が必要となった。これによって事故車の撤去作業に時間がかかり、復旧作業が長期化しているという。

 東海道新幹線の線路は一般的な在来線と同様に、盛り土の上にバラスト(砕石)を敷き詰める構造。山陽や東北などコンクリート板に直接線路を敷く「スラブ構造」の新幹線と比べ、乗り心地が快適となる半面、バラストの突き固めなどの保線作業が必要となる。

 新幹線の保守作業は終電後の午前0時から、始発前の午前6時までの間に行われる。

 ある新幹線技術者は「基地からの保守用車の出し入れや、始発前の安全確認に必要となる時間を除けば、実質的に作業できるのは数時間が限度」と話す。作業の遅れは始発の遅れに直結するため、現場はかなり慌ただしい雰囲気だという。

 新幹線の営業列車は追突を防ぐため、先行列車との距離に応じて自動ブレーキがかかる自動列車制御装置(ATC)など手厚い安全システムを備えている。一方、保守用車は複数台が近接して作業する場面も多く、運転士らの注意力に頼ることも多いという。

 東海道新幹線では1993年と2015年にも、保守用車同士の追突、脱線事故でダイヤが混乱する事故が発生。JR東海は再発防止策として保守用車同士の接近警報装置の改良などを続けてきた。(細沢礼輝)

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