能登半島地震の発生から3カ月が経ち、仮設住宅に入ったり、自宅に戻ったりする人も増えてきた。被災者の健康状態をどう把握し、生活を支えていくのか。発災直後から被災者と向き合い支援にあたる珠洲市健康増進センターの三上(さんじょう)豊子所長(59)に現状や課題を聞いた。
――仮設住宅への入居が進んでいます。
仮設住宅に入る人には、困ったときの行政や医療機関の連絡先を伝え、介護が必要な人や障害がある人には個別に声がけをしています。一人ひとりの住まいや経済的な状況のほか、通院や服薬、福祉サービスの利用に支障があるかなどを共通の「ヒアリングシート」に記入してもらい、専門機関につないだり、継続的に訪問したりしています。
避難所でのヒアリングでは、フォローが必要な人は1割程度でしたが、仮設住宅では7~8割になっています。
――どんなことが原因と考えられますか。
避難所には、(被災地の要望を待たずに必需品を送る)プッシュ型支援が届いていました。高血圧など健康上の問題はあっても、生活に困ることはあまりなかった。一方、仮設住宅に入ると、ある程度自分で生活していかないといけません。家具や家電をそろえ、食費や光熱費もかかる。収入が減ったり仕事がなくなったりした人は、これからどうしていけばいいのかと落ち込んでしまいます。
それに、まだ水道が通っていないので、生活そのものの負担も大きい。そんな中、住まいをどう再建するのか、いつ日常に戻れるのか、不安を抱えています。壊れた家を見るだけでもつらいという人もいます。
――自宅で避難している人へのケアは?
1月中旬から、他県から応援で来た保健師を中心に、戸別訪問をしてきました。まずは居場所の把握からでしたが、2月上旬までに9割以上の世帯を回りました。生活状況などを聞き取り、フォローが必要な人には何度か訪問しています。
ただ、お年寄りの中には携帯電話を持っておらず、県外に避難して、ご家族でも連絡がとれなくなってしまうケースもあります。
行政の支援が手厚い半壊以上の世帯と同じくらい、準半壊や一部損壊の世帯は多い。「一部」といっても、家の中はぐちゃぐちゃだったり、雨漏りしていたり。それでも仮設住宅に入れず、何とか暮らしている人もいます。そういう人への支援にも力を入れていきたい。
――外からの支援も減っています。
最大の課題はコミュニティーの再建です。珠洲市はもともと共助が強い地域ですが、地震でばらばらになってしまいました。仮設住宅に入ったり、自宅に戻ったりすることで、避難所より「見えづらく」なってしまうこともあります。出てきてもらえるような場作りが必要です。
問題は山積みですが、時間は止まらない。仮設住宅に入居する人や、避難先から戻ってくる人は今後さらに増えるでしょう。一人ひとりと何度も話をして、寄り添っていくしかないと思っています。とにかく生きる気力を持ってもらうこと。そこからです。(聞き手・藤谷和広)
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