北海道湧別(ゆうべつ)町で日本酒を汽水湖であるサロマ湖に沈めて「海洋熟成」させ、町の新たな特産品にしようとする取り組みが進んでいる。湖水の振動による味の変化やブランド化に期待しており、町の担当者は「全国的な知名度のあるサロマ湖を地酒造りに生かし、少しでも多くの人に町を知ってもらえるきっかけになれば」と意気込む。(共同通信=川村隆真)
町は5月から実証実験を始め、上川町の「上川大雪酒造」が酒を仕込む。7月下旬には水深約10メートルの湖底に醸造した日本酒100本を沈める予定。2、3カ月ごとに一部を引き揚げて味の変化を確認するといい、最終引き揚げは約1年後の計画だ。
湖に沈める作業を担当するのは札幌市の企業「北海道海洋熟成」。北海道の複数自治体で海洋熟成を手がけており、出来上がった酒はふるさと納税の返礼品としても好評だ。この会社によると、波の振動などが分子構造に作用し、さまざまな味の変化が起こるという。
代表取締役の本間一慶さん(45)は、オホーツク海につながる日本最大の汽水湖であるサロマ湖は外海と違った潮の流れがあるとし、「アルコールの角が取れて華やかさが出てくるのでは」と推測。約1年の実証実験で味成分の変化を分析する見通しだ。
沈める酒は特別純米酒「湧別」。新篠津(しんしのつ)村産の酒米を使っており、すっきりした味わいが特徴で、熟成酒との飲み比べも楽しめるという。
湧別町は本年度予算に、協力する漁師への謝礼や分析費用など実証実験に関連する約160万円を計上。来年夏以降、熟成した酒の商品化を目指す。オホーツク海とサロマ湖の豊かな魚介類は地元の自慢で、町の担当者はホタテやカキといった海産物との「ペアリングによる波及効果」にも期待。「酒造りを通じて特産品化の機運が高まったり、産業間の垣根を越えた連携が強まったりしてほしい」と話した。
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