信楽焼の器に入ったタヌキのクッキーを開発した「吉善」の池田洋平社長=滋賀県草津市

 温かな土の風合いとシックな色味の信楽焼の器に、ぎっしり詰まったタヌキのクッキー。滋賀県草津市でネット通販事業を営む「吉善」が地元の窯元や障害者施設の協力を得て、新商品を開発し、4月から販売している。同社の担当者は「新しい滋賀のお土産にしていきたい」と意気込む。(共同通信=佐々木夢野)

 きっかけは、池田洋平社長(46)が取引先の窯元から「安価な海外製品が増え、信楽焼の生産額が落ち込んでいる」との話を聞いたことだ。同県甲賀市を中心に作られる信楽焼だが、ある土産物店では「焼き物」は隅に置かれる一方、食品売り場には人の列ができているのを目にした。

 「値段も決して安くなく、信楽焼の魅力である土の風合いの良さを知らない人には手に取ってもらいにくい。身近なクッキーを詰めたら良いのでは」と思い立った。

 信楽焼の器は直径11センチ、高さ6.8センチの円柱型で赤、青、黄の3色。江戸時代から続き、スタジオジブリなどとコラボしてきた甲賀市の窯元に製作を依頼した。クッキーを食べ終わった後は、食器や小物入れ、花器などさまざまな使い方ができる。さらにふたも小皿として活用できる。

 国産小麦やバターを使い、安心安全にこだわったクッキーの製造を担うのは、就労継続支援A型事業所「がんばカンパニー」(大津市)だ。18歳の息子に障害があり「常々障害者の方と一緒に何かできないかと考えていた」と池田さん。税込み5500円という価格については「福祉という観点ではなく、正当なビジネスとしてやっていきたいからだ」と話す。

 信楽焼と言えば、タヌキの置物のイメージが強い。メインとなるクッキー型には、北海道在住で障害のあるアーティスト友民さんが描いたタヌキの絵を採用した。

 今後はネットだけでなく県内の博物館にも商品を置き、さらに多くの事業所などに製造を依頼し、障害者の雇用を生み出したいと考えている。同社が運営するサイト「OQRUSTORE(オクルストア)」で購入できる。

 ◎信楽焼

 滋賀県の旧信楽町(合併により現甲賀市)を中心に作られる陶器で、越前焼や常滑焼などと合わせ「日本六古窯」と称される。粗い土質で耐火性があるのが特徴で鎌倉時代に始まった。国の伝統工芸品に指定されている。信楽陶器工業協同組合によると、全盛期の1992年の生産額は約170億円に達したが、2023年には約25億円まで減少した。

信楽焼の器に入ったタヌキのクッキー
滋賀県草津市の吉善

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