【神奈川】野毛山動物園(横浜市西区)で、腎不全により6月に死んだオスのインドライオン「ラージャー」をしのぶ写真展が開かれ、多くのファンが別れを惜しんでいる。

 ラージャーは、2008年によこはま動物園ズーラシア(同市旭区)で生まれ、14年に野毛山にやってきた。ラージャーはヒンディー語での意味から、「野毛山の王子」と呼ばれ親しまれてきた。

 インドライオンはインド北西部に生息。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い「絶滅危惧IB類」に区分されている。国内の動物園で見られるのは、ズーラシアの3頭のみとなった。

 21日まで開かれている写真展は、生まれたばかりの姿や野毛山での公開初日の様子など、ラージャーの16年間を約40枚の写真で振り返っている。

 西区の50代の女性会社員はここ数年、週に3回もラージャーを見に来ていたという。「どこか人間みたいで、こんなにかわいいライオンは他にいなかった」と涙ながらに語った。4歳の頃から園に通って55年以上になるという中区の男性は、「ラージャーの雄たけびが聞こえなくなって寂しい」「少年時代に興奮させてくれたジャガーやライオンなどの猛獣はみないなくなってしまった」と切ない思いを明かした。

 野毛山では、14年にメスのジャガー「オジャガ」が死に、20年にメスのスマトラトラ「ミンピ」が繁殖のため上野動物園(東京都台東区)に移っており、ラージャーの死で猛獣はいなくなった。動物全体でも、野毛山で飼育するのは2014年の99種から10年間で73種に減った。

 野毛山動物園によると、希少種は遺伝的多様性を維持しながら個体数を増やす必要があるが、異なる血統の個体を飼育できる広大なスペースのある動物園は国内には多くないという。一つの園で遺伝的多様性を維持することは難しく、国内外の動物園と協力して維持する方法を模索しているという。

 入園無料。月曜は休園(祝・休日の場合は翌日)。(中嶋周平)

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