東日本大震災の津波で墓石が流された福島県双葉町の中野共同墓地の墓じまいが16日、福島県復興祈念公園の建設予定地で行われた。引き取り手のない墓石や破片など423点は17日以降、県が撤去して廃棄物として処分する。

 県や工事関係者ら約20人が集まり、墓石の前で供養を行った。この地区の区長高倉伊助さん(68)は「一区切りついてほっとした気持ちもある。先祖も空の上から私たちを見守ってくれるだろう」と話した。

 中野地区は東京電力福島第一原発から約3㌔北にあり、津波で多くの犠牲者が出た。原発事故による避難指示は2020年3月まで続いた。墓地には約30世帯の墓石があったが、所有者がわかった墓石や遺骨はそれぞれ新しい墓地に持ち帰ってもらった。

 それでも残った墓石は県が昨年9月、遺失物として警察に届けを提出。双葉町と浪江町が広報して所有者を捜したが、423点が処分されることになった。

 高倉さんによると、中野地区の全世帯に連絡を取り、処分することに同意してもらったという。「近くに神社を新たに建てたので、『手を合わせる場所ができてよかった』と言ってもらっている」と話した。

墓地周辺は復興祈念公園に整備

 周辺約50㌶は、国と県が26年春をめどに福島県復興祈念公園を整備する計画だ。中核となる「追悼と鎮魂の丘」を国が整備する。墓石が置いてある場所は、県が盛り土をして多目的広場にするという。

 津波で、近くの浪江町請戸共同墓地の墓石や遺骨も流された。町は高台に新たな共同墓地を造ったうえ、22年3月11日、収集された墓石の上に土をかぶせ、「先人の丘」と名づけて由来などの看板を設置した。

 みちのく民俗文化研究所の岩崎真幸代表は「墓石は単なる石ではなく、その地域の歴史を伝える文化財でもある。そういう視点も持ってほしい」と話した。(大久保泰)

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