自認する性別で法的に取り扱われるために、なぜ離婚しなければならないのか――。女性と結婚後、性別移行した50代のトランス女性=京都市=が16日、戸籍上の性別を男性から女性に変更するよう京都家裁に家事審判を申し立てた。既婚者の性別変更を認めない性同一性障害特例法の規定は、憲法13条が保障する自己決定権などを侵害し、違憲で無効だと主張している。
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特例法は戸籍上の性別を変えるうえで五つの要件を定めている。このうち、生殖機能の喪失を求める「生殖不能要件」について、最高裁は昨年10月、「違憲・無効」と判断。性器の見た目の変更を求める「外観要件」についても、広島高裁が先月、「手術が必須なら違憲の疑い」と判示した。こうしたなか、新たに、現在結婚していないことを求める「非婚要件」の妥当性が問われることになった。
申立書などによると、2人は2015年に結婚した。トランス女性はその後に性別移行し、移行後も円満な婚姻関係を継続させている。2人に離婚の意思はないが、規定がある以上、戸籍上の性別を変更するには離婚する必要がある。
今回、性別変更を申し立てたトランス女性によると、処方箋(せん)やマイナンバーカードなど、戸籍上の性別が表示された書類を提出するたびに家族や別人のものと勘違いされ、いちから説明する必要があるという。
女性は「望まないカミングアウトをさせられている。書類を実態に合わせて欲しい」と話す。
非婚要件は、結婚後に性別変更すると、現行法で認められていない同性婚の状態が生じる、として設けられた。性同一性障害特例法は、性別変更の要件の一つに「現に婚姻をしていないこと」と定め、既婚者は離婚しなければ性別変更が認められない。
2019年2月、性同一性障害と診断された京都市内の会社経営者が性別移行して、妻と結婚したまま性別変更の審判を申し立てた。京都家裁が却下し、大阪高裁も抗告を棄却。最高裁も20年3月に特別抗告を棄却した。
最高裁は、規定は「結婚している人の性別変更を認めると、異性間のみの婚姻を認める現在の秩序に混乱を生じかねないという配慮に基づくもので、合理性がある」と判断した。
しかし、その後、同性婚を認めないのは憲法違反だと訴えた訴訟で、各地の裁判所で「違憲」や「違憲状態」とする判決が相次いでいる。札幌高裁は今年3月、「憲法は同性婚も保障している」として、現状を違憲と判断した。(茶井祐輝、関ゆみん)
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