デジタル書道の普及に努める台湾・淡江大の張炳煌教授=2024年2月、台湾北部・新北市(共同)

 台湾書道界の重鎮が中心になって開発したデジタル書道システムが台湾でじわりと普及している。電子ペンとタブレットで書道を楽しめる同システムは教育現場でも採用され、デジタル書道のコンテストも開催。科学技術の力で伝統文化を活性化させる試みとして注目されている。(共同通信=渡辺靖仁)

 開発を率いてきたのは中華民国書学会会長の張炳煌・淡江大教授。デジタル化が進み、字を書く機会が減る中、パソコンを使って若い人が書道を楽しめる方法がないかと思案。淡江大の技術系の教員らと共に2001年、開発に乗り出した。

 毛筆特有の「とめ・はね・はらい」を再現できるようになるまで苦労したが、2009年に専用ペンとタブレット、パソコン用のソフトがセットとなった「e筆(イービー)」の販売を開始。2018年にはタブレット端末「iPad(アイパッド)」とアップルペンシルで楽しめる「e筆」アプリが発表され、さらに気軽に始められるようになった。

 上級者になればかすれや濃淡なども表現でき、毛筆の作品とほとんど見分けがつかない。筆圧の加減で「とめ・はね・はらい」を表現するのは毛筆と同じだ。毛筆よりもよりゆっくりとした速度で筆を運ぶのがこつだが「運筆の技術は相互に応用できる」(張氏)。

 淡江大(北部・新北市)で張氏の授業を受ける2年生の呉宥儒さん(19)は「自身の作品を保存したり先生や知人にシェアしたりできる。使い勝手が良い」と話す。呉さんは自身の落款印もデジタル化し、書に添えて、本格的な作品にして楽しんでいるという。

 手本の運筆を再現できるなど学習用の機能も備わっており、2023年3月以降、台湾各地の小学校で教材として採用を開始。淡江大などが中心となり2012年に大学生によるデジタル書道のコンテストを始めた。当初決勝は参加者が会場で作品を書いていたが、2023年からはオンライン上で実施する方式になった。

 故宮博物院の分院「故宮南院」(南部・嘉義県)では2023年10月、デジタル書道の展示も設けられ、e筆を使い中国古代の書家の文字を学ぶコーナーが人気を集めている。

 張氏は日本書道界との交流の功績が認められ、2023年度の外務大臣表彰を受けたばかり。「紙と筆を使った書道に味わいがあるのはもちろんだが、e筆の魅力も日本の書道愛好家に知ってもらいたい」。日本でデジタル書道作品の展覧会を開きたいと意気込んでいる。

台湾南部・嘉義県の故宮南院でe筆を使い古代書家の文字を学ぶ子どもたち=2023年10月(故宮南院提供・共同)
学生にデジタル書道の指導をする張炳煌・淡江大教授(左)=2024年2月、台湾北部・新北市(共同)
台湾・新北市、嘉義県、台北市

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