海でおぼれた中学生2人を救助したとして、兵庫県姫路市と高砂市在住のマリンスポーツ仲間5人の表彰式が姫路市飾磨消防署で11日にあった。式には姫路海上保安部長、県警飾磨署長も出席。功績の大きさから3機関合同での表彰となった。

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 6月30日午後、中野将さん(62)は姫路市白浜町の海で、手に持ったウィングで風をとらえてボードを進ませるマリンスポーツ「ウィングフォイル」を楽しんでいた。

 当日は波が高く、風も強かった。荒れ気味の天候だが、沖合200メートルほどまで進んだ。

 「助けて!」という声が聞こえた。

 人の頭が波間で浮き沈みしていた。急いで近づき、ボードにつかまらせた。おぼれていたのは男子中学生。助け上げると、大量の海水を吐き出した。すぐに岸へ帰ろうとしたとき、近くで仰向けで波をかぶっているもう一人に気付いた。

 気を失っているのか、顔に波がかかっても動く様子がなかった。

 「転覆するから、動かんように」と先に助けた1人に声をかけ、2人目もボードにのせた。

 長さ2メートルほどのボードは、3人の重さで沈みかけていた。

 「少しでも早く岸に戻らなければ」。ウィングで風をつかみ、半ば沈んだボードを走らせた。体感で10分。ようやく岸にたどり着いた。

 岸には40年来のマリンスポーツ仲間の星尾充央さん(72)がいた。手元に携帯電話がなく、星尾さんは近くのサーフショップまで通報のために走った。

 潮が満ちてきたので、仲間の有田恵次さん(56)と井上伸博さん(50)が2人をさらに引き上げ、ウェットスーツのベストをかぶせて体を温めた。

 近くで遊んでいた中学生4人が海に入り、うち2人が沖に流されたとみられる。1人は低体温症で命の危険もあったが、病院へ搬送された2人は共に回復したという。

 119番通報した高砂市の男性を含む5人に、内田亘・飾磨消防署長から姫路市の「しらさぎ賞」、浅野光行・姫路海上保安部長から「感謝状」、小丸剛・県警飾磨署長から県の「のじぎく賞」が贈られた。

 内田消防署長は「3機関合同の表彰はおそらく、初めて。皆さんの勇気ある行動に感謝申し上げます」、浅野部長は「多くの方の教訓の機会となり、海の安全に寄与していただいた」、小丸署長は「海への知識を持った方がいたからこその救助。今後もご協力いただきたい」と述べた。

 中野さんは「2人目を見つけたときは、呼びかけても反応がないし『これはやばいな』と感じた。岸に戻るまで必死でした。3機関合同の表彰式は、こんな大事(おおごと)になると思わなくてびっくりしています」と話した。(宮沢崇志)

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