知床世界自然遺産の知床岬で計画されている携帯電話基地局に反対するオンライン署名が10日で締め切られ、41日間で4万6107筆が集まった。郵送などの直筆も1500筆以上集まった。事業を推進する総務省など関係省庁や北海道、地元2町に提出する。

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 署名発信者は斜里町民有志が立ち上げた「知床の自然を愛する住民の会」。結果について同会は「知床の自然を守りたいと願う人が予想以上に多く、署名活動の意義を実感できた」としている。署名は全国からだが、「この件を知らなかったという地元の人も数多く、知床の自然を守りたいと拡散してくれた」という。

 署名では電源設備としてサッカーコート並みの太陽光パネル群の建設、自然草原を約2キロ掘削してケーブルを埋めるといった工事が、知床の「核心部」へ及ぼす影響や懸念をQ&A方式で丁寧に説明した。

 この中で、漁業者らの安心安全のために携帯電話の通信エリアを拡大することに「反対はしていない」と強調。ただ、衛星携帯電話の普及が期待される中で「性急な判断をせず、環境を破壊しない方法を模索すべきだ」と訴えた。

 知床は今年、国立公園指定60年、来年は世界自然遺産登録20年の節目。同会は署名の呼びかけの中で、会長を務めた元町長で世界自然遺産登録をかなえた午来昌さん(87)のこれまでの言葉と同じく、「知床の自然を次世代に残す」という覚悟を記した。

 衛星携帯電話が普及すれば、知床岬で太陽光パネルは不用になる。その場合は、再び大がかりな撤去作業が必要になる。現在工事は「不十分」と指摘された動植物への影響調査などで中断しているが、中止は決定されていない。

 住民の会は「署名でも、なぜ国は衛星携帯電話の利用を考えないのかといったコメントが多かった。私たちもこの疑問を国に聞いてみたい」と話している。(奈良山雅俊)

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