東京電力は19日、福島第1原発の汚染水を浄化処理した後のトリチウムを含む水の本年度初めての海洋放出を始めたと発表した。昨年8月に開始してから通算5回目。福島第1では汚染水が日々発生しており、放出の終わりは見えない。風評被害も続いている。

福島第1原発=2022年3月

 東電によると、今回は5月7日までに約7800トンを放出する予定。事前に放出する水を分析し、トリチウムや他の核種の濃度についての基準を満たしているとしている。  本年度は7回に分け、約5万4600トンを放出する計画で含まれるトリチウムの総量は約14兆ベクレルになる。年間上限に設定した22兆ベクレルは下回るが、計4回行った23年度の放出量は約3万1200トン、トリチウム総量は約5兆ベクレルだったため、放出量とトリチウム総量はいずれも前年度を大幅に上回る。  放出開始後、原発周辺の海水を早期に分析する濃度測定で最も高い数値だったのは昨年10月21日の1リットル当たり22ベクレルで、放出基準の同1500ベクレルを下回った。  一方、福島第1では地下水が1日約90トン流れ込み、溶け落ちた核燃料(デブリ)に触れ、汚染水となっている。放出がいつ終わるのかは見通せない状況で、放出開始後は中国が日本産海産物の輸入を停止した。東電が支払った風評被害の賠償額は15日現在で、約70億円に上る。こちらも被害拡大の終わりが見えない。(荒井六貴) 

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