「共生のまち 生野」という連載を、朝日新聞のデジタル版と大阪版で続けてきた。紙面では5月末に始め、32回を数える連載に。大阪市生野区で暮らす、外国にルーツをもつ子どもたちの姿を紹介してきた。

 生野区は人口約13万人のうち、外国籍住民が20%強の約3万人を占める。日本全体では約3%なので桁違いだ。歴史的に韓国・朝鮮籍の人が多い区だが、近年はベトナムや中国、ネパールの人も増え、約80カ国に及ぶ。

 連載では、区内で外国ルーツの子が集まる学校や団体を、同僚の大滝哲彰記者と半年余り定点観測した。私が担当したのは、廃校跡地で学習教室を開く「IKUNO・多文化ふらっと」と、来日生徒向け入試を行う「大阪府立大阪わかば高校」。実はずっと以前から気になっていた2カ所だった。

 というのも私は10年前から、外国ルーツの子を支える市民団体「Minamiこども教室」(大阪市中央区)で学習支援ボランティアをしながら、取材を続けている。教室の活動の中で、多文化ふらっととは合同でデイキャンプに行くことがあった。わかば高校へは、教室に通った中学生数人が進学していった。

 同じ大阪市内で、外国ルーツの子どもを支える生野での取り組みに触れて感じたのが、「まち」の力だった。大小様々な団体が長きにわたって実践を重ね、今では区役所までが「共生」をまちづくりの理念に掲げる。

 背景にはやはり、朝鮮半島にルーツをもつ市民が、差別と向き合いながら支えの営みを蓄積してきた歴史があるだろう。多文化ふらっとを含めた多くの市民団体や学校、企業でも、在日コリアンの人々がその蓄積を生かして、新たに日本に来た人々に支えの手を伸ばしている。それが「まち」レベルの共生へ向かう推進力を生む。

 どの地域にも応用できる実践ではないだろうが、必ずヒントはある。何よりまず、生野のまちで生き生きと躍動する外国ルーツの子どもたちの姿に、連載の各記事を通して触れてみてほしい。

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 玉置太郎(たまき・たろう) 2006年入社、11年から大阪本社記者。大阪ミナミと英国ロンドンで計約10年間、移民・難民の子ども支援ボランティアをしながら取材した著書「移民の子どもの隣に座る」を昨年秋に出版。今年3月に坂田記念ジャーナリズム賞を受賞。大阪出身。41歳。(玉置太郎)

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