全国で相次いだ不正送金事件を巡り、警察庁サイバー特別捜査部と警視庁など16都道府県警の合同捜査本部は9日、無職の矢野洋平容疑者(44)を不正アクセス禁止法違反容疑で逮捕した。捜査本部によると、同容疑者は不正送金グループの首謀者で暗号資産(仮想通貨)の追跡で特定した。不正送金の集団トップの摘発は異例という。

前身のサイバー特別捜査隊を含め、同庁サイバー特捜部が国内の容疑者を摘発したのは初めて。国外では、2023年にインドネシア国家警察と共同で、偽サイトを通じたフィッシングの手口で盗んだ日本人のカード情報を不正利用したとして、インドネシア国籍の男を摘発したケースがある。

捜査本部によると、矢野容疑者を筆頭にした不正送金グループのメンバーは10人以上おり、被害件数は22年夏〜23年春ごろに全国で計20件以上、被害額は計約1億2千万円以上にのぼる。

グループは他人名義のIDを利用して銀行口座の残高を確認した上で、偽造免許証を利用して仮想通貨の口座を開設していた。不正入手したSIMカードで乗っ取った他人の携帯電話を操作し、銀行口座の預金を仮想通貨に変換して送金していた。

これまでに各地の警察が偽造免許証を作成するなどした実行役計9人を逮捕。サイバー特捜部はスマホなどを解析し、矢野容疑者が実行役へ指示していたことを確認した。仮想通貨を追跡し、同容疑者の関係先の口座に移動したことを突き止め首謀者と特定した。

矢野容疑者の逮捕容疑は、仲間の男(24)と共謀し、不正入手した60代男性のIDなどを利用して大手銀行のサーバーにアクセスして男性の口座残高を確認した疑い。捜査本部は認否を明らかにしていない。

捜査本部はグループの実態や被害の全容解明を進める。

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