海や川の事故で、10年間に死亡・行方不明になった人が10人以上いた場所が全国に7カ所、5人以上だと47カ所あったことが、海上保安庁と河川財団がまとめたデータの分析からわかった。水の事故による犠牲者は年700人前後で推移している。専門家は「水の事故の怖さは、いつもは安全な場所が、風向きや潮の満ち引きによって急変することにある」と指摘する。
警察庁によると、2023年には水の事故で743人が犠牲になった。
朝日新聞は、海上保安庁と河川財団から、13~22年に発生した約1万件の事故データの提供を受けて分析。発生場所の緯度経度から、東北大の中谷友樹教授の監修のもと、地理情報の分野でよく使われている手法を用いて、犠牲者が集中している場所を探した。
その結果、静岡県の伊豆半島にある城ケ崎海岸で17人、沖縄県恩納村の真栄田岬で13人、千葉県船橋市の「ふなばし三番瀬海浜公園」周辺で11人の犠牲者が出ていた。その次は淡水の事故が続き、滋賀県大津市の琵琶湖西岸で11人、岐阜県美濃市の長良川で10人が犠牲になっていた。
ひざ下くらいの水深で「助けて!」
長良川で犠牲者が集中していたのは、美濃橋の近くだった。河川敷があり、夏場には県内外からバーベキューを楽しむ人々が訪れる。
インドネシアから技能実習に来ているレズキ・フェブリアントさん(27)は昨年8月、ここで、溺れていた女性2人を助けた。
「助けて、助けて!」
叫び声に驚いて目を向けると、20歳くらいの女性が2人、パニックになりながら流されていた。2人ともライフジャケットを着ていたが、頭が下流側になり、水流で身体を起こせないらしい。
助けに行って驚いた。水深は、ひざ下くらいしかなかった。
「初めはふざけているのかと思ったが、おびえきった表情で、ただごとではなかった。勤務先からは、この辺りでは絶対に泳ぐなと言われていた。もっと深い場所だったら助けられなかった」
その後、地元の警察署から感謝状を贈られた。
水難学会理事で長岡技術科学大の斎藤秀俊教授は「水の事故は、例えばこの岬では北西の風が吹くと離岸流が発生しやすいなど、場所ごとの条件で判で押したように発生する。浮輪やライフジャケットを着けるような対策だけでなく、場所ごとの特性をよく調べておくことが大切だ」と話す。(山崎啓介、日高奈緒)
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