◆五輪開催で迫られた「人権擁護」
東京都庁
1980年代に性的少数者らへの権利擁護の機運が高まった欧米と比べ、国内論議は遅れていた。東京が乗り出した背景の一つに、2020東京五輪・パラリンピックの開催都市として、人権擁護の姿勢を発信する必要があった。14年のソチ冬季五輪の際、開催国ロシアで同性愛宣伝禁止法が成立したことに欧米各国の首脳が反発して開会式を欠席。これを受け、五輪憲章に性的指向による差別禁止が加わったからだ。 東京大会はビジョンに「多様性と調和」を掲げ、18年、都は都道府県で初めて、性自認や性的指向による差別を禁じた人権尊重条例を制定。22年には、同性カップルらを認める「パートナーシップ宣誓制度」を導入した。◆パートナーシップ制度を1265組が利用
都によると、今年6月末までに延べ1265組が制度を利用。開始に合わせ、都職員の休暇や福利厚生の対象を同性パートナーにも広げ、男女の事実婚と同様に扱うように改めた。 ただ、性的少数者の支援団体からは周知や実効性がいまだ不十分との声も。都条例は差別を禁じるが、当事者団体「LGBT法連合会」によると、特に生まれた時の性別と異なる性で生きるトランスジェンダーの人たちへの誤解や誹謗(ひぼう)中傷、就職時の差別などは後を絶たない。同会の神谷悠一事務局長は「差別禁止という都条例の趣旨を、民間企業を含め、都内の隅々まで浸透させる必要がある」と指摘した。(奥野斐) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。