旧優生保護法を巡る訴訟で最高裁大法廷は同法を違憲などと判断した(3日)=代表撮影

旧優生保護法下での強制不妊手術について、国の賠償責任を認めた3日の最高裁判決は、同法が制定時から違憲だったと断じた。不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」だけを理由に国を免責することは「著しく正義・公平の理念に反する」と認めなかった。

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岸田文雄首相は判決を受けて陳謝し、月内に原告を含む当事者と面会する意向を示した。

訴訟の主な争点は2つ。同法の違憲性と、1950〜70年代に手術を受けた原告らに今も国への賠償請求権があるかどうかだった。

最高裁が違憲性を検討する上で問題視したのは、本人の同意なく体にメスを入れる行為を国が認めたうえで、特定の障害がある人だけを区別して不妊手術を行ったことだ。個人の尊重を定めた憲法13条と、法の下の平等を定めた同14条に違反すると認定した。

旧優生保護法が「当時の社会状況をいかに勘案したとしても正当とはいえない」と指摘し、国による立法そのものが違法だったとの判断を示した。最高裁が立法行為自体の違法性を認めるのは初めて。

立法後の国の対応も問題視した。不妊手術の実施時、身体拘束や麻酔薬などの使用も許容される趣旨の通知を発出するなど手術を積極的に推進したとして「責任は極めて重大」と非難した。

1996年の母体保護法への改正で不妊手術の規定がなくなった後も速やかに補償の措置を講じず、被害者1人に一時金320万円を支給する2019年成立の救済法は対応として不十分と指弾した。

旧民法では、不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する除斥期間という考え方が判例で確立し、公害や薬害など被害が顕在化するまで時間がかかる訴訟でたびたび「時の壁」として立ちはだかってきた。

除斥期間を過ぎると、原告側にどのような事情があっても一律で賠償請求権が消失するとした1989年の最高裁判例があり、例外的に除斥期間を適用せず賠償責任を認めたのは過去に2例しかない。

最高裁はこの判例を変更し「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認できない場合」、除斥期間の主張は権利乱用として許されないとの新たな見解を示した。

国の全面敗訴となった今回の判決を受け、各地で起こされているほかの訴訟でも賠償を命じる判決が出るとみられる。

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