能登半島地震では石川県奥能登地方を中心に、顕微鏡やビーカーなど学校の理科の授業で使う道具にも被害が出た。学校生活が徐々に平常に戻る中、道具が使えないことで授業にも影響が出てきている。そうした被害に対して、民間の財団が支援をする動きも出始めている。(脇阪憲、上井啓太郎)

生物実験準備室で保管するホルマリン漬け標本。余震で落下して割れるのを避けるため床に直置きしている=輪島市の輪島高校で

 輪島市河井町の輪島高校。地震の揺れで、実験室に置いてあった人体解剖模型や分子構造模型が破損した。県教委に報告した理科実験器具の被害は、ビーカーや試験管などの消耗品を除き、計8点で総額約117万円に上る。中には38万円近い物理実験器具や、4年前に導入したばかりの化学実験器具もあった。

◆実験室はいまだ水道・ガスなし

 高橋潤哉教頭(52)によると、実験器具の購入のめどは立っていない。さらに、同校で水が使えるのはトイレや手洗い場といった一部のみで、実験室には水が通っておらずガスも止まったままなこともあり、実験の授業はできていない。水道設備本復旧の見通しは立っておらず、実験過程を撮影した写真や動画を使って指導しているという。

化学実験準備室で保管する薬品。地震で棚が壊れ、現在は机の上に置いたままになっている=輪島市の輪島高校で

 一般社団法人の能登里海教育研究所(石川県能登町)は地震直後、被災した同県能登地方の学校で実験用具の被害状況を調査。主幹研究員の浦田慎(まこと)さん(50)によると、輪島高校以外の高校数校でも、ガラス製品や実験器具で被害が確認されたという。

◆公益財団法人が助成の受け付け開始

 こうした現状を受け、民間からの支援の動きが出始めた。東京都の公益財団法人「藤原ナチュラルヒストリー振興財団」は5月、今回の地震で被災した高校などの生物の授業に使う顕微鏡やビーカーといった器具について助成の受け付けを始めた。  7月末までの期間内に必要な物品を学校が申し出て、認められると財団が発注し、現物が送られる。高橋教頭は、理科用品の購入には多額の費用がかかるとして「非常に助かる話で、大変ありがたい」と支援の動きに期待した。


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