雨を理由に外出を諦めない―。けがや障がいで体が不自由な人向けに快適でデザイン性の高い服づくりを手がける東京都豊島区の服飾メーカー「ケアウィル」が、車いす利用者向けのレインウエアを完成させた。  開発は、新しい福祉製品やサービスの実現を支援する川崎市の委託事業として進められ、車いすユーザーの市職員の意見が取り入れられた。(北條香子、写真も)

レインウエアに込めた思いを語り合う笈沼さん㊧と能城さん=川崎市で

◆上下セパレート、風でめくれにくく

 「開発中に『レインウエアでどこに行きたい?』と聞かれたが、そもそも雨の日に車いすで出かける発想がなかった」。川崎市職員の増田海都さん(26)はこう話す。増田さんは骨形成不全症で骨が折れやすいため、手動式自走用車いすを使って生活する。市の理学療法士らによると、従来の車いす用レインウエアは、介助者に着脱を手伝ってもらわなくてはならず、風でめくれたり、蒸れたりすることもあり、雨の日の外出をためらいがちだという。  今回できたレインウエアは、ジャケットと膝掛けの上下に分かれており通気性が良く、簡単に畳めて、車いすにコンパクトに収納できる。風で膝掛けがめくれないよう、靴のつま先に引っかけてから引き上げて着られるようにし、側面にギャザーを寄せて膝にフィットするようにした。タイヤへの巻き込み防止なども配慮されている。増田さんは「雨の日はスーパーの総菜が安くなるというので、行ってみたい」と笑顔を見せた。

首から掛けることもできる腰掛けベルトを着ける増田さん=川崎市で

◆障害によってデザイン切り替えOK

 レインウエアの開発は、昨年度の川崎市の福祉製品等開発委託事業として、費用面などで市の支援を受けた。増田さんのほか、同じく市職員で脳性まひの能城(のぎ)彩佳さん(34)も車いすを使う当事者として、雨の日の外出時の課題や要望などを伝え、解決できるウエアを一緒に検討していった。  ジャケットの袖が内側のボタンでポンチョタイプに切り替えられる機能も備えた。能城さんのように腕の可動域が限られる人からの「腕を通すときに袖に負荷がかかり破れやすい」という意見を参考にした。一方、手動式自走用車いすの利用者からは「袖があった方がいい」という意見があり、切り替え可能なデザインにした。  膝掛けがずり落ちないよう固定するベルトも、首から掛けたり、車いすの安全ベルトに通したりと6通りから選べる。能城さんのリクエストで、膝掛けにはスマートフォンを入れやすいポケットをつけた。

車いすのハンドルにベルトを通して膝掛けのずり落ちを防ぐ方法も=川崎市で

◆モノの力で「行ってみたい」を応援

 ケアウィルは体が不自由な人の意思や自尊心を大切にし、機能的でおしゃれな服づくりを目指す。笈沼(おいぬま)清紀代表(43)は「『できる』と当事者を後押しする製品が世の中にないことは社会課題。モノの力で『ここに行ってみたい』という気持ちが出てくる」と力を込める。  男女兼用でフリーサイズ。色はベージュ。新しい商品やサービスの応援者を募って先行販売するサイト「マクアケ」で、7月9日まで注文受け付け中。一般販売予定価格はジャケット1万1990円、膝掛け9790円。応援のみのプランもある。今秋には同デザインの防寒着も発売予定。詳しくはケアウィルのウェブサイトで。 

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