永目健一郎さん

 「挑戦していない人が生徒に挑戦しろというのはおかしい」。大阪市の予備校講師永目健一郎さん(38)は教諭時代に抱いた違和感を胸に「ブラック校則」など教育現場の問題に疑問を投げかける投稿を交流サイト(SNS)で続ける。挑戦は別の舞台でも。グループ結成5年となる「おじさんアイドル」として活動する異色の教育者だ。(共同通信=廣根結樹)

 京都市の大学を卒業した2010年から4年間、関西の私立高で教諭として勤務。強豪部の顧問や入試の管理責任者の業務による過重労働が原因で、心身に不調を来した。理不尽に髪形などを制限する校則にも納得ができず、初めて担任をした生徒の卒業に合わせ辞めることを決意した。

 退職後も勉強を教えたいとの思いから、名古屋市の塾を経て、現在は大阪市で予備校と塾の講師を務める。動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」では教員時代のエピソードを取り上げ、ユーモアを織り交ぜながら、外部からの目線で異を唱える。最近では、学校の頭髪検査を「一番無駄だと思う時間」と一刀両断にし、視聴者から共感を集めた。

 週1回のライブ配信では学生の悩み相談を受ける。髪の一部を短く刈り込むツーブロックの禁止を変えたいという学生に「生徒会長になったら」と助言すると、校則が変わったと報告が来たこともあった。21年にはおかしな校則を紹介する本を出版。今後も生の声を聞き、学校という枠組みからこぼれた生徒をケアしたいと考えている。

 もう一つの顔は飲み屋で出会った30~40代の男性5人で結成するアイドルグループ「漢塾」のリーダーだ。SMAPの解散後、自称後継者として結成し「茶番を真面目に全力でやろう」とライブ活動を続ける。個人では、日本経済新聞社主催のラップ大会で2年連続30位以内に入った。

 6月で結成5年となり、9日には参加者にも出演する機会を設け、全員が主役だとうたう記念フェスを主催した。「道半ばだけど、今なら教育者として生徒に『挑戦を』と言える」とほほ笑んだ。

 

 ◎ブラック校則

 頭髪や下着などを巡り、児童生徒のプライバシーや人権を侵害するような規定。生来の茶髪を黒く染めるよう強要されたとして、大阪府立高の女子生徒が2017年に府に慰謝料を求めて提訴したことを受けて、各地で見直しを求める機運が高まった。文部科学省は21年、都道府県教育委員会に対し、理不尽な校則を見直すよう求める通知を出した。

永目さんの予備校

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