新緑がまぶしい今年4月、青森市の十和田八幡平国立公園内で観光客らに愛されてきた名物茶屋が、装い新たにオープンした。店内からランプの明かりが漏れ、落ち着いた雰囲気が漂う「ひょうたん茶屋」。新たに店主になった工藤勇人さん(61)は「大切な場所を受け継ぎ、地域の魅力を伝える拠点にしたい」と意気込む。(共同通信=永富絢圭)
近くにある酸ケ湯温泉旅館直営の「萱野茶屋」として長年営業。青森市と奥入瀬渓流など有名観光地を結ぶ国道沿いにあり、紅葉の時期は多くの観光客でにぎわった。しかし人手不足などの影響で2023年ごろから休業が続いていた。
工藤さんが温泉旅館から茶屋再開の相談を受けたのは同年4月ごろ。普段はひょうたんに穴を開けた「ひょうたんランプ」を手がける。旅館側の思いに応えようと奮い立った。大事にされてきた「茶屋」の一語を引き継いで店名はひょうたん茶屋に決め、店の経営に乗り出した。
開店の準備に入ると、地元から次々と温かい支援が集まった。店に据えるまきストーブを譲ってほしいと交流サイト(SNS)で呼びかけると「ぜひ使って」と住民が無償で提供。まきに使う木は、リンゴ農家が持ってきてくれた。厚意でもらった廃材で、椅子やテーブルも作った。
メニューにもこだわりがある。硬度の低い八甲田山の雪解け水でいれるコーヒーは、まろやかな仕上がり。青森市の三内丸山遺跡にちなんだ「縄文うどん」は、麺にヤマイモや栗、ドングリを練り込んだ自慢の一品だ。
「寂しかった。再開してくれてありがとう」「こんな場所でいれたてのコーヒーが飲めるなんてぜいたく」。店は、なじみの客や住民らの喜びの声であふれている。
店で知り合った客同士がその場で意気投合し、食事を共にしたり、一緒に「八甲田ロープウェー」に向かったりすることもあった。工藤さんは「ここはさまざまな人の交流の場でもある。新たな形で受け継いでいきたい」と力を込めた。
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