東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、贈賄罪で起訴された出版大手KADOKAWAの角川歴彦(つぐひこ)前会長(80)は27日、「無罪を主張したことで長期間、身柄拘束される『人質司法』で身体的、精神的苦痛を受けた」として、国に2億2000万円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。

◆「証拠隠滅や逃亡の恐れがないのに」

提訴後の記者会見で「刑事司法の問題はひとごとでない」と話す角川歴彦氏(中)

 角川前会長は2022年9月、大会組織委員会元理事の高橋治之被告(80)=受託収賄罪で公判中=への贈賄容疑で東京地検特捜部に逮捕され、同10月に起訴された。逮捕前から一貫して無罪を主張し、23年4月に保釈されるまで約7カ月間、勾留された。初公判の期日は未定。  訴状によると、「罪証隠滅や逃亡をうかがわせる事情がないにもかかわらず、検察官は恣意(しい)的に逮捕状や勾留を請求した」と主張。勾留中は体調悪化で一時的に意識を失うなどした。複数回にわたり保釈請求しても検察官が反対し、裁判官が却下したのは、不当な身体拘束を禁じた憲法に違反しているとした。

◆「品位をおとしめる拷問を受けた」

国を提訴後、東京地裁前で報道陣の取材に応じる角川歴彦氏と弁護士ら

 提訴後、東京都内で記者会見した角川前会長は「拘置所では品位をおとしめる拷問を受けたと感じている。ひとごとでない人権の問題として共有してほしい」と述べた。弁護団長の村山浩昭弁護士は「刑事司法の実情を正面から問う裁判だ」と話した。  弁護団は、角川前会長の受けた身体拘束は恣意的拘禁に当たるとして国連人権理事会の作業部会にも調査を申し立てた。(中山岳) 

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