漁業権を持たずに川でサケ漁を行うことは水産資源保護法などで禁じられていますが、浦幌町のアイヌの団体「ラポロアイヌネイション」は地元の川でサケをとることは先住権によって認められるとして、国や道に対し、浦幌十勝川の河口から4キロの間では法律などで規制されないことの確認を求めて、4年前、全国で初めて訴えを起こしました。
これまでの裁判で原告は、「サケをとる権利は数百年以上前からのアイヌの伝統や慣習によって確立された先住権で、国際的にも固有の権利とされている」などと主張していました。
18日の判決で札幌地裁の中野琢郎 裁判長は「アイヌの人々は遅くとも江戸時代以降、サケ漁をしており、サケ漁がアイヌの生活、伝統、文化などと密接に関わるものと認められる」と指摘しました。
そのうえで、「そうした歴史的背景を踏まえたとしても河川は公共のものでありサケは天然の水産資源であることを鑑みると特定の集団が排他的に漁業を営む権利を有すると認めるのは困難だ」などとして訴えを退けました。
原告「判決は不服」控訴する方針
判決について、原告の団体「ラポロアイヌネイション」は、記者会見を開き、控訴する方針を示しました。
団体の差間啓全さんは、叔父で長く団体の代表を務めことし2月に亡くなった正樹さんの遺影をそばに置きながら、「率直に言って、この判決は不服に思います。正樹さんの遺志を引き継ぐには気持ちだけでもつなぎとめていきたい」と話していました。
訴訟の経緯
北海道のアイヌ民族は古くから川でサケをとって暮らしていましたが明治時代に政府から禁じられ、同化政策によってことばや生活スタイルも変えることを余儀なくされました。
抑圧を受けてきた先住民族をめぐっては近年、世界各国で権利を認める動きが進んでいます。
2007年の国連総会では「先住民族は伝統的に所有するなどした自然資源に対する権利を有する」などとする宣言が採択され、日本も翌年この宣言を採択しました。
日本では、5年前の2019年、「アイヌ施策推進法」が施行され、アイヌ民族を初めて「先住民族」と認め、独自の文化を生かした地域振興などが進められることになりましたが、土地や資源に対する権利は、法律に盛り込まれませんでした。
裁判が始まったのはこの翌年。
現在、水産資源としてのサケを保護するため川での捕獲は法律などで原則禁止されており、伝統的なサケ漁や儀式の文化の継承や保存の目的では漁が認められています。
原告は、そもそも古くから浦幌町の浦幌十勝川の河口周辺でサケ漁を行っていて、明治以降、政府によって一方的に漁を禁じられたと主張して、アイヌ民族の本来の姿を取り戻し、地元の川で経済活動として再びサケ漁を行いたいと訴えを起こしました。
原告の団体「ラポロアイヌネイション」の差間正樹 名誉会長は、当時、「権利を手に入れるための足がかりにしたい。精いっぱい闘っていく」と話していました。
しかしことし2月、差間さんは判決を待たずに病気のため73歳で亡くなりました。
裁判を引き継ぐことになったおいの差間啓全さんは、「国が北海道にアイヌがいたということは認めても、アイヌの権利は認めないのはおかしいことで、国はちゃんとした策を講じていくべきです。アイヌとして胸を張って生きていけるような人生になれば」と話していました。
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