会津の奥座敷として知られる東山温泉(福島県会津若松市)の旅館「向瀧(むかいたき)」庭園が、文化財に登録されることになった。
国の文化審議会が24日開かれ、同庭園を国の「登録記念物」(名勝地)に登録するよう文部科学大臣に答申した。
向瀧は建物もすでに文化財に登録されており、建物と庭園両方に文化的価値があると認定された県内唯一の現役旅館となる。
向瀧は、江戸時代に会津藩の湯治場だった建物を明治時代初期の1873年、平田家が引き継ぎ温泉旅館として開業した。以来、建物の増改築を重ね、日本の伝統美を宿泊者に提供する老舗(しにせ)旅館として現在に至る。
今回登録が決まった庭園は、山を借景とした傾斜地に築かれた。奥行き40メートル、高低差12メートルで、面積は約1100平方メートル。庭園の規模は小さいが、上段、中段、下段に分けられた構造で、池や灯籠(とうろう)・景石を巧みに配置している。
三方をコの字状に取り囲む純和風の客室からは、季節ごとに表情を変える庭園が見られる。日本文化の神髄を堪能できるとあって外国人観光客の人気も高い。
答申では、「庭園を取り囲む客室や廊下など様々な角度からの立体的な視点や四季折々の演出によって、風致景観の多彩な変化を楽しむことができ、近代庭園の事例として意義深い」と評価された。
文化財登録制度は1996年に導入された。文化財を日々の営みの中で利活用しながら維持・保存していくというのが趣旨だ。
向瀧の玄関や客室は、有形文化財の登録第1号でもある。
社長の平田裕一さん(63)をはじめ、従業員は草むしりや落ち葉掃除、雪囲いの取りつけなど、手間をかけて庭園の維持に取り組んできた。
平田さんは「建物に加え、庭園の文化的価値も認められ喜ばしい。お客様に日本の四季の素晴らしさを堪能してもらえるよう、これからも努力していきたい」と話した。
静かにくつろいで過ごせるよう、庭園の鑑賞は宿泊者のみ。
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福島県内からはこのほか、二本松市の「二本松城跡」の一部の藩校「敬学館」跡などが史跡に追加指定される。(斎藤徹)
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