英国を訪問中の天皇陛下は24日、ロンドンを流れるテムズ川下流に設置された世界最大の可動式防潮施設「テムズバリア」を視察した。適応障害から回復途上の皇后雅子さまは、25日からの公式行事を中心に出席することになっており、滞在先のホテルで体調を整えるという。

 ヘルメットを被った陛下は、管理棟を視察した後、川にかかる橋を通って水門に移動。担当者の説明にうなずきながら、自身も身振り手振りを加えて言葉を交わすなど熱心に視察した。

 テムズ川は、英国南部から北海に流れ込む河川で、ロンドンを貫くように流れている。テムズバリアは川を横切るような形で約500メートルにわたり設置された水門のような施設で、テムズ川の氾濫(はんらん)を防ぐため、1982年に建設された。84年の公式開通式には故エリザベス女王が出席した。

 陛下は、学習院大学で中世の瀬戸内海の水運を学び、留学先のオックスフォード大で中世のテムズ川の水運を研究。留学後の87年に訪れたネパール中部の都市ポカラでは、かめを手にした女性や子らが水くみ場の前で列をなしている光景を目の当たりにし、水が環境、衛生、教育などさまざまな面で人間の生活につながっていることを認識するようになったという。後に、当時の光景を、「(女性たちは)水がぽたぽたと落ちてくる蛇口のところで水を集めているのですけれども、本当にほんのすこししか落ちていませんでした」と振り返った。視察先で小学生を前に、世界にはいまだに清潔で安全な水を入手するのが難しい人々が多くいることを説明し、「水の問題というのはとても大切な問題だと思います」と熱弁したこともある。

 水問題への取り組みは皇太子時代からのライフワークとなり、これまでも国内外で治水や防災のための施設を訪問し、国際会議の場で講演を重ねている。

 訪英前の会見では「水の恩恵を享受しつつ、災害に対応することは歴史を通じた人類共通の歩み」とし、「各国の水を巡る問題を知ることは、それぞれの国の社会や文化を理解することにもつながる」と述べていた。

 23日には、日本の文化発信拠点としてロンドンに開設された「ジャパン・ハウス」に足を運び、開催中の「見つけよう日本のデザイン」展を視察した。

 陛下は、ラグビーのウェアが、体を包み込むように立体的に製作されていると聞くと驚いた様子だった。(ロンドン=中田絢子)

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